取調室2号と4号
「うちの奴らどこに行ってる?」
「第2取調室です」
「ありがとう。他に使える部屋は空いてる?」
「第4取調室が使えます。」
「そっちの部屋も使用申請お願いしたい」
「わかりました。」
杉田係長はノックして部屋に入った。無機質な取調室の真ん中には事務机が二卓、そして折りたたみ椅子に腰かけた徐は腰紐で固定され腰紐は端は植村が掴み徐の背後に座っている。
部屋にゾロゾロと入りかけたその時細川が静止した。
「申し訳ありませんが高梨さんは別室でお待ちいただけないでしょうか?」
考えたら私は警察の人間ではない。単なる目撃者であり協力者でしかなかった。
吉澤と動いているうちにいつの間にかタッグチームを組んでいるつもりになっている。恐ろしい。
「では吉澤さんをお願いします」
そういうと私は細川に明日菜を手渡した。
「確かにお預かりしました」
そういうと細川は明日菜を抱え取調室に入っていった。
取り調べの間どうしようか?
てっきり取調室二つ取っていたから一つは私の待合かなっとも思ったが違ったようだ。
エレベーターホールに自販機とベンチがあったな。そう思い出すと私はそう遠くないエレベーターホールに向かった。
☆
「おはよう。今日はいいニュースと悪いニュースがある。どちらから聞きたい?」
そう言いながら杉田は細川に目配せし、徐の目の前に対峙して席に腰を下ろした。
「まあどちらもほとんど一緒だから簡単に言おう。あのメモリーカードな、読み出しに成功した。」
徐と峯岸の顔の表情が一瞬曇る。
「この前、ファイルが壊れてて読み出せなかったって言ってませんでしたか?」と峯岸。
「ああ、ちゃんと壊れていたよ。不思議なことにな。」
「で、峯岸君その件で話があるんだ。ちょっと4号まで移動しようか。」
そういうと細川は峯岸の背中を押すように部屋を移った。
☆
エレベーターホールで座っていると部屋を移動する2人の姿が見えた。こちらに視線を投げるとそのまま別室に消えてゆく2人。
「俺に話ってなんですか?」
峯岸から話を切り出してきた。
「峯岸君、君が科捜研に持って行ってくれた例のカードなんだが、あれは人形の中に入っていたものではなくて高梨さんのスマホのカードだったんだよ」
「俺を・・・俺を試したっていうんですか」
「何も試す必要はないだろう、何を試したというんだね?君を疑っていたって?何を?」
「ただ、高梨さんのあのカード、直前まで音楽や写真が入っていたというんだ。でも壊れてる。不思議な事にね。」
畳み掛けるように細川が話し始めた。
「君、大分借金あったようだね。それをつい最近まとめて完済している・・・」
その時、廊下に杉田の大きな声が響いた。
「おい!しっかりしろ!おい、誰か!救急車を!!」
☆
突然の騒動にエレベーターホールで時間を潰そうとしていた俺も取調室に駆けつける。 何事かと周囲の警官たちも集まってきた。
第2取調室に向かうと口から涎を流し泡を吹きながらひっくり返る徐と懸命に呼びかけたり心臓マッサージを行う植村巡査の姿が見える。
間も無く救急隊員が駆けつけAEDの準備に取り掛った。
2号取調室の周りに人垣ができる中、ドアを開け放たれた4号取調室、細川の背後から後ずさるように出てくる人影。
「細川さん、後ろ!」
俺が思わず叫ぶと方向を変え脱兎の如く細川に突進する峯岸の姿があった。