50話〜ルルーシアとデルカ
その頃ギルドの外でルルーシアがデルカと話をしていた。
「相変わらずのようですね。ルルーシア!」
「しかし、何故貴方がここに?やはり、ブラットの事で来られたのですか?」
「ああ、そのつもりだったのですが。ルルーシアのお陰で、我が配下の者達はこの有様ですがね」
デルカはルルーシアにやられ、その辺に転がっている自分の配下を指差した。
「ですが、魔族が忍びこんでくれば、流石に私でなくてもこうなるかと」
「確かにそうなのですが」
「それで、ブラットに用がある筈の貴方が、何故ここに来られたのですか?」
「それがなんと言うか……」
ルルーシアは不思議そうに、
「何か、あったのですか?」
デルカは少し考えてから、
「それなのですが。んー……」
ルルーシアは少しイライラしながら、
「だから、何が言いたいんですか!?さっきから、昔から何故貴方は、肝心な事に限って、ハッキリと話が出来ないのですか!?」
「そう言われても、こればかりは……」
「まあ、いいですが。それで、何があったのですか?」
デルカは話し出そうとしたが、そこにガルドとカトレアとビスカが来た。
「ルル、元気そうだなって、何でデルカがここにいる?それに、何で魔族の者達が、その辺にゴロゴロと転がっているんだ?ルル、これはもしかして、お前の仕業か?」
「あっ、ガルド様」
「ハッ!ガルド様にカトレア様。何故、ここに?」
「それは、私の方が聞きたいのですけれど?デルカ、何の為にここに来たと言うのですか?」
「それは、なのですが。はぁ……」
「ねえ!?デルカ、アンタね。いつになったら、そのハッキリしない物言いなおるのよ!!」
「ハッ!?ビ、ビスカが何故ここに?」
「あっ!ああ、そうだった。ルル、大変な事が起きた」
「大変な事とは?」
「俺も、うかつだったんだが。ブラットが拐われた!まさか、ジェシカとレフィカルが、こんな事をするとは思わなかった」
ルルーシアは驚いて、
「ブラットが拐われた!?それに、何でジェシカとレフィカルがこんな所にいるんですか?」
「あー、そうそう、そうでした。それを言いにルルーシアに会いに来たのでした」
「デルカ、何か見たのか?」
「はい、見たのは見たのですが。ちょうど、ブラット様が、ジェシカとレフィカルに拉致され、シェイナルズ城の裏手にある洞窟に入って行きましたので、追いかけましたが、途中で巻かれてしまいました。それで、ルルーシアがここにいる事は知っていましたので」
「それで、こんな事をしたと言うのですか?」
「こんな事と言われますが。そもそも、忍び込もうなど思っておらず。ただ、普通に会いに来ただけだというのに、何故……」
「そうは言ってもなぁ。流石に、魔族が堂々と裏手から入ってくれば勘違いもすると思うんだけど。ははは……」
「クスクス。ルルらしいですね」
「そうなるとその洞窟が怪しいと見て間違いないな」
「しかし、ブラットは何故、拐われたのですか?」
「さあなぁ。俺も、詳しくは知らねぇ。だが、ブラットの周りで何かが起きようとしてる。いや、既にもう起きているのかもな」
そう話をしていると、とてつもない何かが遥かに遠くの方から、こっちに向かって来る事に気がつき、
「これは、なんなんだ?いや、この感じは何処かで?」
「確かに何処かで……」
「なんか、凄く懐かしいような。いや、会いたくなかったと、私は思う」
「ビスカ。そんな事が耳に入ったら大変なのでは?しかし、今になって何故?」
「あり得ません!何故ここに?」
そして、ガルド達は遥か遠くの方から、向かって来る者を待つ事にしたのだった…。