32話〜いざ辺境の地へ{改}
ここは荷馬車の中。ハクリュウ達は、あれから宿屋でグロウディスを待った後、街を後にし辺境の地へと向かった。
そしてディアナが御者として操り荷馬車を走らせていた。
「……なるほどな。シエルがハクリュウを召喚した後、扉を閉じなかった為、そこからハクリュウの妹のユリナが、ここに来てしまったというわけか」
「申し訳ありません。私の不注意でこんな事に……」
「ん?まあ、仕方ない。話によれば、シエルは召喚魔導師でも、さほど異世界の事について知らなかった」
そう言いながらグロウディスは下を向き考え、
「んー、そうなると、予想外の事が起こりそうな気がするんだが?」
「何が起こるって?これ以上、何も起こってほしくない。まさか、妹まで巻き込む事になるなんて。でも、この場合どうなるんだ?」
「何がだ?」
「いや、ユリナはイレギュラーになるわけだよな?」
「ああ、確かにそうなる」
「本来の言い伝え通りなら、異世界の勇者はノエルとクロノアと俺で、異世界の魔王がユウさんだとして」
一呼吸おき、
「もしオルドパルスが、その言い伝え通り動いているのであれば、ユリナは未知の存在となる」
「確かに、そうだね。この場合どうなるんだろう?ユリナちゃんは……」
クロノアはユリナを心配そうに見ていた。
「ハクリュウが言うように、ユリナがここにいること自体イレギュラーなのだろう。前例がない以上なんとも言えん。このまま様子を見るしかないだろう」
「うん、そうだね。私も様子みる事にする」
ユリナがそう言うとアキが眠そうに、
「ふぁ〜、僕は暇つぶしという事で、それに面白そうだしね!」
「そういえば、アキって何者なわけ?」
「クロノア。僕は、ただ旅をして歩いている幼気な、か弱い女です」
「……か弱い幼気な女って、どこがだよ〜!!」
「え〜、ハクリュウ。どこがって、僕自身、全部に決まってるでしょう?」
「はぁ〜、まぁいいや。それで、目的も何も持たず旅をしているって……やっぱり、か弱くないよな!」
ハクリュウは呆れた顔になった。
「そういえば、アキって、どこの国の人なの?」
クロノアがそう聞くと、
「あっ、えっと……まぁ、いいじゃない。僕がどこの誰だろうと」
そう言い誤魔化した。
「まぁ言えない事は誰にでもある。それに、この状況だと、もしもの事を考えて人は多い方がいいのかもしれんな」
「そうそう、そういう事。それじゃ、改めてよろしくね!」
そして皆もよろしくと言い、今から行く辺境の地の事を話し始め、荷馬車は辺境の地へと向かっていた。