31話〜ヴィオレとヴィオレッタ=紫
翌朝、フリックとグレンは何の収穫もないまま戻ってきて、昨晩の事を聞き疲れきって部屋で寝てしまった。
そして、サアヤは昨晩の事を伝えにルルーシアに会いにギルドに行った。
ブラットはフェリアと朝の散歩をしていた。
「ブラット、昨晩の事なのですが。何て言ったらいいか」
「ん?ああ、でも、フェリアが無事で良かった」
「無事ではありましたがは、私とした事が、眠らされるなんて」
「仕方ないんじゃないのか?人間の体になって、そんなに経ってないだろうし」
「そうなのかも知れませんが」
そして、しばらく街を歩いていると後ろからブラットを呼ぶ声がしたので振り向いた。
そこには紫の花柄のワンピースを着たブラットぐらいの歳の女性がいた。
ブラットはその女性を知っていた。
そう、その女性はブラットの幼馴染でヴィオレ=ルージュである。
「あれ、ブラット珍しいわね。こんな所で何してるの?」
「ヴィオレこそ、こんな所で何してんだ?」
「ふふ、最近、この街の道具屋で住み込みで働いてるんだよ!」
「そうなのかぁ。だから最近、城下街で見かけなかったんだな?」
「ふぅ、ブラットにとっての私って、その程度の認識しかないのねぇ。まぁいいけど、それより、そちらの女性は誰なのかな?まさか彼女じゃないわよね!?」
「はぁ……それは」
「私は、フェリアと申します。訳あってブラットと共に旅をすることになりました」
「ブラットが、旅って大丈夫なの2人で?」
「えっと、実は2人じゃないんだよなぁ」
「2人じゃないってどういう事?」
「グレンと他に3人、そして俺とフェリア足して6人で旅をしてるんだ!」
「ふ〜ん、グレンも一緒かぁ。ねぇ、その旅に私も混ぜてくれないかなぁ。楽しそうだし!」
「んー、この旅は遊びじゃないんだよなぁ。でもどうするフェリア?」
「そうですねぇ。どうしましょうか?」
「フェリアさん、旅の目的は分かりませんが、グレンやブラットよりも、私は役に立つと思いますよ!」
「確かにヴィオレは見た目よりたくま……」
そう言おうとした瞬間、ヴィオレはブラットの口を塞ぎ、
「ブラット!私、女なんだけど……今たくましいって言おうとしたよね?」
ブラットは口を塞がれ苦しくてヴィオレの手を強く握ると、
「い、痛い!ちょっと、いつの間に、そんなに握力ついたのよ」
「あっ、ごめん。でも、ヴィオレって、そんなに腕細かったか?」
「ふふ、それはブラットが成長した証なのではないでしょうか?」
「そうかもなぁ。それでどうする?」
「そうですね。旅は多い方がいいと言いますし、構わないのでは?」
「あっ!そろそろ、仕事場に戻らないと。それじゃ、ブラットにフェリアさん、後で道具屋の方に来て下さい。親方に許可をもらわないとならないので」
手を振りヴィオレは急ぎ道具屋に向かった。
そしてブラットとフェリアはヴィオレを見送った後宿屋に戻ることにした。
ブラットはフェリアと話しながら歩いていていると誰かとぶつかった。
「あっ!ごめん、大丈夫か?」
ブラットは手を差し出そうとした。
そして、その女性は紫のシンプルながら派手めのドレス風の服を着ていた。
「もう痛いじゃないの!この美しい私に
ブラットは一瞬固まった。
そしてその女性はヴィオレッタ=アッズィロと言い昔ガルドと城に行った際に城下街で追い回された。
「あっ、何でお前がここに?」
「それは、当然家出して来たに決まってますわ」
「はぁ、また家出かぁ」
「それでブラットは、何をしているのですの?」
「俺は昨日から旅に出て、ここの宿屋に泊まっている」
「まぁ、楽しそうですわね。私も、お仲間に加えてくれませんこと?」
「フェリア、どうするって……いや、ダメだ!!こいつも連れて行くって言わないでくれよなぁ」
ブラットは昔の嫌な記憶が走馬灯ように頭をよぎった。
そしてフェリアは不思議そうに、
「ブラットどうしたのですか?私はフェリアと申します。そうですね、ヴィオレッタさんは何故家出を?」
「それは……あの、窮屈な生活が嫌なだけですの!」
「あんないい暮らししていて窮屈って、お前はどんだけわがままなんだよ」
「そんな事を言っても、私は嫌なものは嫌なのです」
「ヴィオレッタ、ついてくるなって言ってもついてくるんだろ?」
「勿論ですわ!」
「少しの間の旅なら、いいのではないのでしょうか?」
「ああ、そうだな」
「荷物もありませんので、このままついて行きますわ」
「おい、前の様に食い逃げだけはやめてくれよな」
「あ、あれは、いつも侍女がみんなやってくれていたので、お金というものを知らなかったからですの」
ブラットは呆れたように溜息をついて、
「はぁ、じゃ、宿屋に行こうか」
そして、ヴィオレッタとフェリアは頷き3人は宿屋に向かったのだった…。