30話〜紫の服の女…そして皇帝マグドとレオルド
ここはとある上品な女性の屋敷。
黒いローブの男は先程起きたことを上品な感じの女性に報告に来ていた。
「……申し訳ありません。ブラットを連れて来る事が出来ませんでした」
「仕方がありません。しかし、まさか皇帝陛下が動いているとは」
「どうなさいますか?」
「そうですね。相手は皇帝陛下の配下となれば、慎重に事を進めていかねばなりませんね」
「はい、しかし…慎重過ぎてもどうかと?」
「確かにそうですね。ですが、皇帝陛下に悟られずに動くにはどうしたらいいのでしょう」
「ブラットさえ捕らえてしまえば、事は済むのですが」
そう話していると奥の方から紫の服を着た女が近づいてきて上品な女性の目の前で膝まづき、
「奥様、その役目この私にお申しつけ下さい」
「お前が、ブラットを連れて来ると言うのですか?」
「私であれば、直接ブラットに接触したとしても、疑われる事は無いと思いますので」
「確かに、お前ならば直接接触し機を伺う事は可能だな」
「それでは、お前に頼むとしましょう」
「では、早急にブラットと合流したいと思いますので、これで失礼します」
紫の服の女は、一礼をして部屋を出て行った。
そして黒のローブの男は上品な女性と少し話した後屋敷を後にした。
場所は移り、ここはシェイナルズ城の皇帝マグドの寝室。
あの後レオルドは皇帝マグドに先ほど起きた事を報告に来ていた。
「陛下、こんな夜遅くに申し訳ございません。ブラットの事で、至急お伝えしたい事がありましたので」
「何があった?」
「それなのですが、使えなかったはずの聖剣を、私の目の前でいきなり使えるようにしてしまったのです」
「何と、それは事実なのか?」
「はい、しかと、この目で見ましたので、聖剣の形や色も変わり、なおかつ、私の魔法攻撃をかき消すほどの魔力を放ちました」
「ほお、それは異な事もあるものだ。そうなるとブラットには元々その様な力が備わっていたという事になるな」
「おっしゃる通りでございます。しかし、そうなると、このままブラットの力が覚醒してしまえば、今以上に捕らえるのが困難になるかも知れませんが?」
「そうだな。ブラットが力をつける前に、早々に手を打たねばなるまいな」
「では、早速エリーゼと共にブラットを捕らえてまいります」
レオルドは一礼をしてから城から出て行った。
「これは、どうしたものか?ガルドに知らせた方がいいか?それとも知らせない方がいいか?考えても仕方がない。とりあえずは様子を見るとしよう」
そして、マグドはベッドに横になり眠りについたのだった…。