18話〜ホワイトガーデンの異変{改}
ある国のある村で、老婆と小さな孫娘が話をしていた。
「リリアや、前にこの世界の昔話を聞かせてあげたかね〜」
「うん、えっとね。争いばかりの1つの国を、3人の勇者様が3つの国に分けて、争いが減ったっていうお話だったよね!」
「そうだったわね。それなら、今日は最も古い昔話を聞かせてあげようかね〜」
……昔々、遥かに昔のお話。まだ国そのものが成り立っていなく、種族同士の争いが絶えなかった頃の話。
かつてのこの世界では、種族同士の派閥や、他種族での意見の食い違いにより、争いが絶えなかった。
だが、それをみかねた者たちがいた。
その者たちは、どうしたらこの世界に争いがなくなるのかと考えた。
そしてある1人の若者が、召喚魔法で異世界から誰かを召喚し助けを呼べないかと提案した。
しかし、どうやって召喚したらいいのかは分からない。
ある若者が、試しに召喚してみようと言い、それに皆は賛同した。
そして、最もマナが満ちている場所を3ヶ所さがし、そこに召喚をする祭壇を作った。
そこで優秀な3人の召喚魔導師が選ばれ、その者たちは各祭壇に向かい異世界の者を召喚した。
そして成功し3人の勇者が召喚された。
その召喚された異世界の勇者たちには、ドラゴンの力が宿っていた。
異世界の勇者たち3人の持つドラゴンの力は、血を血で洗う種族同士の争いに終止符を打った。
だが、その力は余りにも強すぎた為、世界を焼き尽くした。生き残ったのは各種族の戦いに反対し戦わなかった者たちのみになってしまった。
だが、3人の勇者たちを責める者は誰もいなかった。
そしてその後、各種族の者たちは1つの国を作り上げ、3人の勇者をドラゴンマスターと呼び、裁きの神と崇めた。……
「ねぇねぇ。それでどうなったのその勇者たちは?」
「さあね〜。そこまでは、ばあちゃんでも分からんよ」
老婆はそう言いながら孫娘を寝かせつけた。
あれからハクリュウとシエルは、あの一件以来グロウディスと共に城に向かっていた。
「それにしても何で、今の時期に城なんかに行こうなどと思ってるんだ?」
「それは、申し訳ありませんが、今は教える事は出来ません。時が来たら話します」
「城までは、あと少しなんだよな?」
「ハクリュウ様。はい、そろそろ橋が見えてくる頃かと……!?」
シエルは立ち止まり、辺りを見渡した。そして、ある光景を見て一瞬、凍りついた。
橋はうっすらと見えるが、その向こう側にあるはずの城の上空に暗雲が立ち込めていた。
そして城と城下街すべてが、黒い霧に覆われ見えなくなっていたのだ。
ハクリュウ達は何度か橋を渡ろうと試みた。だが、闇の力に跳ね返され橋を渡る事が出来なかった。
「こ、これはいったい……。何があったと言うのでしょうか?」
「シエル!あそこに目的の城があるのか?」
「こりゃ、大変な事になったな。城で何があったかは知らねぇが。お前らが城に用があった事と関係しているのか?」
グロウディスが聞くとシエルは少し考えてから、
「私も詳しい内容は聞かされてはいませんでした。ですが、これはグロウディスさん、あなたにも手伝って頂かないといけなくなりそうです」
シエルがそう言うとグロウディスは頷き、
「そうか。俺は構わない。それと事情が国絡みとなると、お金を貰うわけにはいかなくなるな。元、城で働いていた身としてはな」
「名前を聞いた時から、気になっていたのですが」
そう言うとシエルはグロウディスに視線を向けた。
「グロウディスさんは、あの有名な光速の剣士と言われていたグロウディス・アバロン元聖騎士長様ではないでしょうか?」
「いや〜、バレてしまったか」
するとグロウディスの顔が真剣な表情に変わった。
「でも何故、こんな護衛や冒険者まがいの事をされているのですか?」
「そうだな。城は色々な事があって追い出された。そして、これはお前らが信用できると思い話すが」
一呼吸おき、
「俺は今、この国と世界を変える事が出来ないかと思い、各地を転々とし旅をしている」
「ではグロウディス様は、反逆者という事なのですか?」
「言い方を変えればそうなるだろう。だが俺は革命派という組織を作った」
「革命派?」
「シエルも気づいていたとは思うが。特にここ最近、城の貴族や城内の者たちの様子がおかしくなってきている」
グロウディスはシエルから城の方へと視線を移し、
「そればかりか、最近では各地で異変が起こり始めている」
「おかしくなった?そうなのか……でも、色々な所を見て来たけど。俺が見る限りだと普通に見えたけど?」
「これが普通?先程から気になってはいたが。ハクリュウ、お前はこの世界の人間じゃないな」
ハクリュウは何て答えたらいいか慌てた。
「……そうですね。この際ここで何もかも、私が知り得る事を話した方が良さそうですね」
ハクリュウとグロウディスの顔を見てから、
「私は国王の命により、ハクリュウ様を異世界から召喚しました。そして国王様は……」
“昨晩夢をみた。それは、この世界の終わりの夢だった”
「……と言われ、私はその言葉を信じました」
そう言うとシエルは両手を胸に添えながら、
「王は異世界の白き英雄を召喚し、そしてこの世界に異世界から召喚されるであろう、黒き覇王と灰色の守護者と共に世界を救って欲しいと言われました」
シエルはハクリュウを見ながら真剣な面持ちで言った。
「そういう事か……そういえば仲間から聞いた話だが。確かグレイルーズで、異世界の灰色の守護者らしき者と会ったと連絡が入っていたな」
そう言うとグロウディスは腕を組んだ。
「だとすれば、ブラックレギオンで異世界の黒き覇王が召喚されていてもおかしくない」
「そうなると、俺以外にもこの世界に来てる奴がいるかもしれないのか?どんな奴だろう。覇王っていうぐらいだから相当つよいんだろうなぁ〜」
ハクリュウは辺りを見渡しながら、
「守護者か……そうなるとイメージ的には女性だよな。美人かなぁ」
小声で呟いていた。
それをグロウディスは聞いていて、
「確か、グレイルーズの異世界から来た者は、仲間の話だと子供みたいに可愛い女性らしい」
グロウディスはそう言いハクリュウを見ると、
「それと特徴は、確か服のセンスと髪型が可愛いのと、そして喋り方が猫みたいに『にゃ』をつけて喋ると言っていたが」
ハクリュウはそれを聞き、背筋に悪寒が走った。それは、ある人物を思い出してしまったからだ。
ハクリュウにとって面倒で会いたくないNo.1の相手を思わず連想してしまい、どっと疲れが出た。
(まさかな。いくら何でもここに、あのノエルが召喚されるって……いやあり得ない!ぜぇーーたいに、ありえねぇー。
それに、あいつとプレイするのはいいんだが、いつもペースを乱され、人のいう事は滅多に聞かない。
あくまでも自分のペースを貫く奴だ!でも、そういえばあいつはいざという時は役には立ってたなぁ)
「そうなると今は、ブラックレギオンに行く方がいいかもしれませんね。そういえばグロウディス様は、これからどうなされるのですか?」
「そうだな……俺も一緒に行った方がいいだろう。仲間と合流しこの事や色々と話したい事もある」
グロウディスはブラックレギオンがある方角を見た。
「それに、俺が一緒の方が仲間もお前達の事を疑う事もないだろう」
そしてハクリュウ達は、ブラックレギオンにいるという、革命派の仲間の所に行く事にし、その場から立ち去った。