モフモフは、異世界から
「ところでお嬢さん、あなた、どこから来たんです? その格好、なんなんです?」
白い犬は、仁奈の服装を見てそう言った。敬語のつもりなのだろうけど、どこかイラつく口調。
「あ、これね。日本って所から来たんだけどさ、日本って知ってる?」
「知りませんけど。そもそも、ここをどこだと思ってるんですか? ここは聖域ですよ? 大精霊様が住んでいる、聖域ですよ?」
せいいき? と、頭が追い付かない仁奈。しばらく、様子を見ていたモフモフな犬は、あきれて、
「色々言ってすみませんね。精霊って言う、精霊が、住んでいる、関係者以外は入れない場所なんですよ。ここまではわかりますかね?」
コクッと、頷く仁奈。本当に理解しているのかが心配になってきた、モフモフ。
「それでですね。そこにお嬢さんが、倒れていたわけです。お分かりいただけだでしょうかね?」
「うん、分かった」
「本当ですか? はあ、じゃあ、今すぐ出ていってください」
そう言って、仁奈の服をくわえて、仁奈を連れて歩き出した。
(ん、今どういう状況?)
モフモフはそのまま、海の近くの、森まで行って、結界を出て、そこに仁奈をおろした。
「あの、モフモフさん?」
にこにこ笑顔を作って、呼び掛ける。
「なんですか、お嬢さん」
「多分、私転生者で、呼ばれてきたのですが……」
モフモフはしばらく、停止した。瞬きもせず、身動きを止めた。そして、ようやく動いたかと思えば、伏せをして、こう言った。
「……転生者? おお、お嬢様! 大変申し訳ないです。この無礼、どうかお許しをっ」
「お、お嬢様?」