しちゃった。ついにしちゃったよ! その2
ふと、気が付いた時には、私はふかふかのベットみたいなものに、寝かされていた。
このふわっふわなのは、枕かな? 視界は、真っ白で覆われていた。どうやら、うつ伏せで寝ているらしい。 とりあえず、よっこらしょ。と、寝返りを打つ。
「え……?」
目の前に広がっていた光景に、思わず、目を疑う。そこには、地平線が見えるほどの、海が広がっていた。
「……何で、目の前に海? このふわふわは、ベット。だよね? こんなところに、ベットって、やっぱりまだ夢の中なのかな?」
独り言が長いのは仕方がない。毎度の事だ。人と、関わりにくくなったから、自分と話すことが多くなったのだ。……変人じゃない。誰しも、そういう時期がある。
ほっぺを摘まめば、目が覚めるかな。まずは、定番を試す。
むにーっ!
「いっでえーぇ!」
「ウッサイですねー、この僕が介抱してやったってのに、礼も言わずに、人の上で暴れやがって!」
……摘まんだせいで、幻聴まで!? どうにか、脳をフル活動させ、今までの状況を整理する。
老人に、『異世界転生せんか?』と言われたので、その提案にのった。そして念願の転生。で、何で海にいるんだろう?
考えても、結局、なぜここに。と言う疑問にたどり着いてしまう。
諦めて、現状を受け入れることにした。これは、夢ではなさそうだし、異世界転生なのだから、何が起こってもおかしくはない。そういうことにした。
辺りを見回し、深呼吸をする。海から来る風は、潮のにおいがする。太陽が、ギラギラと仁奈の肌を焼く。光が反射して、砂浜が輝いて見える。
「……綺麗」
地面にスッと手を置く。海の砂の感触が、心地良……ん?
「ふあふあ……?」
手元の感触が、とても心地良い。何かの動物の毛だろうか? それにしても、モフモフである。真っ白な毛並みは、柔らかくて、仁奈の手を優しく包み込む。毛並みの持ち主の体温が、伝わってくる。
「あのー、お嬢さん? 僕の事忘れてません?」
「あ、そう言えば。何か声が聞こえてたんだっけ?」
「それと、モフモフするのやめてくださいっ!」
そう言うと、モフモフがゆっくりと起き上がる。それは、仁奈の身長を優に越えていた。
「うわぁ、でっかい。犬?」
白いふわふわの正体は、でっかい犬だった。どおりで、ベットだと勘違いするわけだ。約2メートルはある。
「犬だけど。ベットじゃないからな」
「あ、えへへ。普通そう思うと思うけどなー」
「……バカだな。お嬢さん。ありえない」