命がけの冒険
2階では電流の配置が変化していた。先ほどは両脇だったのに、今度は放電エネルギーを意図的に配置されたかのようにバラバラ。建物内の電流は自動で流れているのではなく、機械などを操作して生み出されているようだ。
2階は地面の色が青、黄色、赤の3種類に分けられていた。意味はあるのだろうけど、攻略方法を明記されていないためにちんぷんかんぷんだった。
信号なら青は安全、赤は危険ということになるけど、反対の意味もあり得なくはない。クスリは唯一の黒いゾーンで電流の落ち方を観察することにした。
五分ほどでパターンを掴めた。電流は一定の間隔で黄色、赤のゾーンに降り注いでいた。青のゾーンには一度も落ちていなかった。
後ろの扉から電流を感じた。1階から2階につたってきたようだ。クスリは慌てて回避することにした。
青のゾーンを進もうとすると、異変に気付いた。先ほどよりも青のゾーンは減り、赤のゾーンは増加していた。観察していたことによって、コースを危険にしてしまった。
なるべく青のゾーンを進みながら、電流の落ちていないタイミングを見計らって黄色のゾーンにも足を踏み入れていく。黄色はリズムが一定ゆえに、電流の落下をよみやすい。赤はいつ落ちてくるかわからないため、神頼みになってしまう。一撃で終わるのに、ハードすぎるステージだ。
赤ゾーンの隣に宝箱を置いてあった。クスリは当然のことながら、スルーすることにした。アイテム一つのために命を犠牲にするわけにはいかない。(この宝箱の中身は赤のゾーンを5分間だけ青にするというもの。プレイヤーの冒険の手助けになるよう設置されている)
青のゾーンの隣にも宝箱を設置されていた。こちらは生命の安全を保証されているので、冒険の手助けになるアイテムを入手するために開けようかなと思った。
宝箱を開けた直後だった。周囲8マス全てに電流が降り注ぐこととなった。
電流は10秒ほどで消えてなくなった。永久的に消えないかなと思っていただけに、安堵の息をついた。
宝箱はトラップを仕掛けられていることもあるのか。プレイヤーの手助けになるアイテムばかりを詰め込んでいるわけではないようだ。
2階は現時点で敵は出現しない。たまたま運がよかったのか、敵と戦わない仕様になっているのかはわからない。
スムーズに進み、コースの80パーセントあたりまでさしかかった。青のゾーンはなくなり、全て黄色となってしまった。一瞬の判断ミスで命とりになりかねない状況を作り上げられた。
黄色は全部の個所に一定間隔で電流が落下する。デンジャラスゾーンと呼ばれる赤色にも足を踏み入れなくてはならなくなった。退避したのと同時に、電流が落ちてきたら一貫の終わりだ。
黄色ゾーンを進んでいると、画面が切り替わった。命がけの謎解きをしている際中であっても、敵は出現するのか。鬼畜ゲーといわれる、「仁王」ですらかわいく思えてきた。あちらは攻略法を本、インターネットで調べられるため、落とし穴、落水地点を覚えることで難なく進める。
「ペケチューが現れた。敵に先制攻撃を受けた」
「ペケチュー」はプヨプヨに近い性質をしていた。剣で攻撃すれば、特攻になるのではなかろうか。
「ペケチューは電流を唱えた」
上空からの高圧電流が身体を直撃。クスリは100のダメージを受けた。
「てつのよろい」を装備していたときよりも、被ダメージは半分以下に減少。電流を通しやすいため、敵からの攻撃の威力を倍増させていた。
「クスリの攻撃。ペケチューに300のダメージを与えた。ペケチューを倒した」
600の経験値を得て、レベル22に上昇。新しいスキルを取得したと表示された。
お助けシステムを確認するための猶予はなかった。電流ステージをクリアすることに全力を注ぎたい。
赤のゾーンに足を踏み入れると、電流がふってきた。身体を直撃しそうになるも、間一髪で回避することに成功。九死に一生を得る格好となった。
クスリは天に運を任せながら、2Fを進んでいく。死の恐怖と隣り合わせだからか、口はカラカラ、心臓の鼓動は何百倍も早くなっていた。早くこのゾーンを抜けて、情緒を落ちつかせたい。