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「ーーどこだここはあああああああっ!!」

俺の全力の絶叫に木々が驚いたかのように激しく揺れた。
だが、叫びたくなるのも仕方がない。

なぜならーー。

約1日寝て、起きたら俺は見知らぬ森にいるんだ! そんな状況に叫ばずにはいられるか!
あのドワーフ野郎……俺をこんな所までご丁寧に運びやがって……
あの渡された飲み物に睡眠薬盛られてたな……そうじゃなきゃ、この俺が運ばれてることに気づかないわけがない。
よくよく考えてみればあの木のベッドで熟睡出来てたことも不思議だ。
あー……なんで、あの時気づかなかったんだよ。
俺としたことが……見逃してる事が多いな。
もしこれがペーパーテストなら点数低そう。
今の俺を点数にするなら100点満点中88点だ。くそっ。

ゆっくり立ち上がると背中の方に謎の重みを感じた。
なんだよ。これ?
手探りで背中に手を伸ばすと硬いものに触れた。感触的にもドワーフから貰った剣だろう。いちいち下ろして見るのも面倒臭いからそういうことにしとこ。
俺は状況確認のため360度見渡すが高い木が生い茂ってるばかりで、どちらに進めばいいのか皆目見当もつかない。

「飛んで上空から見た方がはやいな」

もう一度辺りを見渡して生物がいないことを確かめると真っ黒い翼を広げ、真上に向かって高く飛んだ。
木は高いが俺のスピードならすぐに空に出ることができるだろう。

ーーと思ったが。

「なんなんだよこれ!」

上へ上へと飛んでいるのに一向に空に出る気配がない。
まるで、俺が飛ぶのに合わせて木も一緒に伸びてるかのよう。
最大限のスピードを出してもなお、空に出られなく体力ばかりが削られていく。

「キリがねぇな」
これ以上は無駄だと思い、ついに妥協して地上へと戻った。
あんなに必死に飛んだのに、ほんの少し空中に浮いたくらいの高さから地上に足をつくことが出来た。
意味がわかんねぇ。取り敢えず、歩いて進むしかねぇな。
俺は翼を引っ込め自らの足で適当に前へと進んでいると、

「ーークスクスクス」

どこからともなく笑い声が聞こえてきた。
反射的に周りを見渡しても誰もいない。

「誰だ?」
「……」
俺の呼び掛けに対して何も反応がない。

「気のせいか」
俺は特に気にせず先を急いごうと再び足を動かす。

それにしても、ほんと木しかねぇな。見る限りだと動物とかもいなさそうだし。

「ーークスクスクス」

出口の見えない道を歩いていると再び笑い声が聞こえ辺りを見渡す。

「だから誰だ!? 姿を見せろ!」
今度は確実に聞こえ、俺は怒鳴り声を上げた。
被害妄想かもしれねぇが、状況的に笑い声の主は俺を見て笑ってるだろう。
道に迷ってあたふたしてる俺を陰で嘲笑ってるかと思うと急に腹立たしくなってくる。

1発ぶん殴りてぇ。

「ーーあー。面白い!」

次にちゃんとした言葉が聞こえ、俺はついに堪忍袋の緒が切れた。
ほぉ。確信犯じゃねぇか。

「そうかそうか。そっちがその気ならこっちだって森ごと丸焼きにしてお前を炙り出してやるよ」

俺が手から炎を出すと、急に木々が激しく揺れ始めた。風も吹いていないのに、まるで強風でも吹いたかのような勢いだ。
今度はなんだよ!?

「やめて! それだけはやめてください!」
さっきまでバカにしてた口調だったが、木々の揺れてる勢いに負けないくらい必死な口調に変わった。
相手の姿は見えないのに、なぜかとても近くで話しかけられているような感覚だ。

「じゃあ、姿を見せろって!」
「もう見せてるじゃないですか」
「は?」
声の主に促され俺はもう一度辺りを見渡す。
そんなこと言われたって、何もいな……

「うわっ!?」

突然、丸く白い毛玉のようなものが俺の懐に飛び込んできた。
今まで生き物らしい生き物は何もいなかったが、どこから現れたのやら。

「なんじゃこりゃ?」
俺がその毛玉を両手で優しく掴んで見ると、その毛玉に顔がある事に気がついた。
つぶらな黒い瞳に、猫のような口。

そして、

「キューッ」
高い鳴き声。
か、かわい……っ!

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