強さ
ニーナが電話して数分後、部屋を二、三回ノックされ、扉を開けると隻腕の男と、船に居た男装した女が部屋に入っていた。
「ありがとな、わざわざ忌々しい事を喋りに来てもらって」
「もっと他に言い方は無いのか」
「こんな物言いで悪かった、んでソイツは?」
「誰でも良いだろう」
「確かに誰でも良いな」
武器持ってくるとか物騒だな。俺は人の事言えないか、ってか針みたいな武器だな。ポッキリ折れないかアレ。
「俺が片腕を失ったのは4ヶ月ほど前、奪われたのはお前も戦ったあの一際強い騎士に戦闘中にやられた」
「もし回復の能力が手に入ったら治そうか?」
「いやいい」
「そういや午後何するんだ? 俺は部屋に居なきゃだが、お前らはそうじゃ無いだろ」
「監視って事で私はサボる」
「監視は伏せとけよ、ワザワザ隠してたんだから」
「二ーナのソレは嘘だから気にしないでいいよ」
「嘘じゃなくてもちゃんと見張ってるから大丈夫だろ」
「監視対象居る事分かってるか?」
「あっ……」
コイツ口の軽いバカか?
「もう1人の方は何も聞かなくて良いのか? 俺に聞きたい事が有るからきたんだろ、ソレともコイツが心配で引っ付いてきたか?」
男装した女は一呼吸おいて質問を始めた。
「君はあのモンスターと戦ってどう思った?」
「騎士団長擬きだけで言うなら、化け物、俺1人じゃ勝てない」
「やっぱりそう思うよね、癖とか無かった?」
「……癖が分かる余裕無かった」
「そっか、君は前衛? ソレとも後衛?」
「一応は両方出来る、半端も良いところだが」
「氷使うから触って凍らせれば勝てるんじゃ」
「そんな事出来るなら最初からやってる」
やっぱりこの槍使いバカだ。
「確かお前、真っ正面から相手したんだよな。アイツの動きは尋常じゃないって言うのに」
「運が良かっただけだ、最初からアイツ本気なら俺は死んでる」
「後コレは後々分かると思うがアイツ周囲の兵取り込んでもっと強くなるぞ」
「……は?」
累は耳を疑った。前戦った時でさえ勝てないと踏んでいるのに騎士擬きを吸収してもっと強くなるとは夢にも思っていなかった。累は聞き返すも同じ回答しか返ってこなかった。
「船の時言ってなかったと言うか、言える状況じゃ無かったからちょっと遅れて、しかも言ったの雄介だけど」
「葵が遅いだけだ」
「……勝てるのかソイツに」
「そう言う事言わないでよ、考えない様にしてるんだからさ」
"悪魔"と戦った時のヤツなら少しは削れるかもな、騎士擬きは案外脆いから大丈夫だとして、問題は1人でどれだけ騎士団長擬きと戦えるかか。