王墓
指導の方も含めて、管理者がわざわざ出張らなくても回るようになってきたので、最近はかなり落ち着いてきている。それでも創造主から連絡が来るのはいつも管理者になのだが。
管理者達の交流も試験的ながらも行っている。今のところそちらも順調である。
世界の数も大分増え、漂流物の数も随分と増えた。しかし外の世界を漂っていた漂流物の数も一段落したようで、最近は流れつく数も落ち着いてきている。
その中に生き物は蟲ぐらいしか居ない。だが、中には一風変わったモノが流れ着いていた。
管理者は見回りのためにそこを歩く。周囲は石と土で出来ており、わざと足音を立ててみれば、コッコッと小気味よく反響する。
通路の幅はどれぐらいだろうか。五人横に並んでもまだ余裕があるだろうぐらいはある。高さも相当なもので、横幅と同じぐらいはありそうだ。
壁、床、天井。何処も真っすぐで平たく、まるで箱の中に居るかのよう。それでいながらしっかりと計算して固められているようで、崩れそうな気配はなく、安心して先に進めそうだ。
現在管理者が居る場所は地下。ある日流れついてきたそれは、地下迷宮であった。
こんな物までやって来るのかとも思いつつ、管理者は漂着物を集めた一角の地下へとそれを導き、地下迷宮という記憶を地下で再現させる。
山とか木のような地上のモノであればそのまま再現してもいいのだが、流石に密閉空間である地下に新しく追加するとなると、それそのものをそのまま再現して追加する訳にはいかなかった。
なので、まずは地下の土を消し去り必要な空間を空けて、そこに瞬時に再現したのだった。地下迷宮が結構広かったので、より簡単な方法を採っただけだが。
この地下迷宮、元々の世界では王の墓だったらしい。それも何代もの王の墓らしく、代を重ねるごとに拡張されていったようだ。
その世界ではその王国は遥か昔に既に亡んでいたようで、墓は存在だけは語られていた未発見のモノだったらしい。墓の全てが流出した訳ではないが、それでもその世界では墓の大部分が消滅してしまった事になる。
地下が消滅した事で、地上では大規模な崩落が起きてしまったようだが、それはまた別の話か。
そんな地下迷宮である。管理者は道が分かるので問題ないが、進むだけでも大変そうだ。それに全てが来た訳ではないので、途中途中が途切れてしまって、流れ着いてはいる最下層まで辿り着けないようになってしまっている。
管理者は折角流れついてきたのだからと考え、道を創造して繋げ、一応迷宮を完成させておく事にした。そのうえで、現在見回り中である。
王の墓だっただけに中には罠も仕掛けられているが、そんなものは関係ない。矢が飛んで来ようと、毒ガスが部屋や通路に充満しようと、管理者にとっては気にするだけ無駄なものばかりである。
一応と言えばいいのか、王の墓だっただけに財宝も収められている。金や銀の他にその国でのお金や宝石などなど。それらは分散して収められてはいるので、集めてみると相当な数になるだろう。
管理者はそれらを確認しながら見回る。管理者は財宝に全く興味が無いのでそのままにしておく。
真っ暗闇の中を進むも、そうした財宝や罠がある以外には暗い道が続くばかり。何かが生息しているという様子もない。
何事もなく地下迷宮を一周した管理者は、地上に戻る。上下左右と縦横無尽に伸びる広大な地下迷宮は、普通は一度入ったら出てこられないだろう。そう思えるほどに広大だった。
この辺りも何かに活用できればいいのだが。そう思うが、元々が王の墓だっただけに、直ぐには思いつかない。
それは急ぎでもないので、管理者は次の見回りに向かう。
本当に色々なモノが流れ着いた。河が流れ着いたり雨雲が流れついたり。折角なので河は水源を創ってそれに繋げ、その先を海にも繋ぐ。
何だかんだと、ほぼ漂着物だけで環境が大分整ってしまった。そんな場所なので使わないのは勿体ないと思い、管理者はペットにもその区画を開放している。しかし、他の場所が余程気持ちがいいのか、あまり近づいてはこないが。
そうした日々を送っていると、管理者は自身の感知に新しいペットが生まれそうな変化を捉えたのだった。