雑事3
装いを変えても、本体である管理者は管理している世界から出る事はない。しかし、リーフェルトーナが自分の持ち場に戻った後、管理者の分身体全てに本体の衣装が一瞬で反映される。
既製品の服を身に付けずに再現していたのは、着替えの労力を省くためという他に、そうやって分身体全てに衣装を反映させるためでもあった。
その後は引き続き分身体それぞれに仕事を任せ、管理者の本体は自身の世界を管理していく。世界の調整というのは、大枠であり中心でもある。それを管理出来るのは管理者だけだ。いや、正確には、管理者だけであるべきだ。か。
管理補佐でもそれに適した能力を与えるか、適するように成長させれば、管理者でなくとも世界の調整は出来る。しかし、世界の調整とは、その世界そのものを掌中に収めているも同義なのである。そんな最も重要で危険な場所の管理は、世界の管理者として一緒に創造された管理者が担うべきだ。少なくとも、管理者はそう考えている。
それは管理者が管理補佐を信用していないという訳ではなく、管理者自体がそれに適するように創られているので、そうあるべきだというだけなのだが。
管理補佐の場合は、管理者とは異なり世界と同一の存在ともいえるので、世界の調整を任せたからとて何かするとは思っていない。世界の崩壊は、即ち管理補佐の終焉でもあるのだから。
もしも何事か起きて自棄になられても困るが、それとは別にしても、威厳の問題もある。管理者の場合は、創造した全ての管理補佐に崇められるほどに敬られているのだが、他の世界の中には、創造した管理補佐に少々軽くみられはじめている管理者もいるのだ。そんな時に管理補佐の心臓とも言える場所を握っているのといないのでは、やはり対応が違ってくるものだ。
生殺与奪の権を握るというのは、手っ取り早く上に立つ方法でもある。あまり多用したり強調し過ぎたら逆効果ではあるが。
とにかく、最重要な部分の担当は管理者自らが行うべき部分であろう。
そういった考えもあるので、管理者は世界の調整だけは己が役目として全うしている。世界の裏側から支える役目なので表に出る必要がなく、最も安全な場所だからという理由は関係ないだろう。
世界に開く穴については相変わらず発生している。管理者の管理している世界では今のところ問題は起きていないが、他の世界では穴から創造物が外の世界に放り出される案件が何件も発生している。
世界の数も一気に増えてきているので、その件数もそれに比例して目に見えて増えてきていた。しかし、創造主はこれの修正をまだ終えていない。あくまでも管理者の推測ではあるが、創造主では完全に修正することが出来ないのだろう。
かといって、用事がある時には一方的に管理者に通告するだけで、管理者から創造主への連絡は一切受け付けてくれない。それは創造以外には興味がないというのもあるが、しかし創造以外に興味がないからこそ、そこへは余人を踏み込ませたくはないのだろう。管理者はそう判断して、既に口出しするのを諦めている。
だが、問題はこれから先もこれが続くという部分だ。外の世界は力に満ちている。それは外の世界の拡張と共に増していっているが、本来、外の世界の容量と満ちている力とのバランスに余裕はそれほどない。
創造主の世界創造のように隔離して区切ってしまえば、いくら内部で力を増しても外に影響はない。しかし、それが外に流出してしまうとなると途端に問題になる。それもかなり重大な問題だろう。
管理者は大丈夫だろうかと心配するも、創造主は一方的に告げてくるだけなので、もしも何か意見を通したければ、以前ペットの飼育許可を求めた時のように、創造主が追い詰められている時に直接言うしかないのだろう。それはそれで機会が少ない。
そこまで考えたところで、自分が考えるべき事でもないかと、管理者は思考を切り替える。
今考えるべきは、管理者同士の交流の事だろうか。特に緊急時の連絡手段。
管理者はどうするかと思案する。現状であれば、管理者全てが来ても満員には程遠い。なので、考える時間はたっぷりあるのだが、用意は早い段階の方が色々と手間が省けるという事実もある。
自分の役割をこなしながら、しばらく思案していく。しかし、役割をこなしながらだと少しではあるが気が散ってしまうので、何か失敗してしまう前に一旦考えるのを止める。
その後、思いついて分身体を一つ増やすと、その分身体に思案に集中してもらうことにした。