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【大聖女】

某国某所

 そこは神聖な雰囲気を漂わせる場所であった。
「大聖女様」
 その場所の奥深く。本来なら誰も知らないであろ場所。そこには幾何学的な円陣が存在しておりその中央には長い黒髪を靡かせ漆黒の瞳を宿した女性が司祭服を身につけ一心に祈りを捧げている。

 その近くには各国より召喚した第二以降の王女が何人も居た。
 どの人物もその家族内で1、2を争うレベルで美しい者を中央に居た【大聖女】が集めた。

「ミミア。アンタのとこみたいね」
 【大聖女】が口を開くとお付きでいたすぐ横の少女に語る。
「!畏まりました。それではお父様にそう報告を」
「そうしな。さてお前さんたちも仕事にかかりな!」
 その鶴の一声でクモの子を散らすようにそれぞれが仕事に係り行く。そして残ったのはたった1人。【大聖女】だ。
「まさか今度はこちらが召喚する側とわ。人生何があるかわ分からないとはコッチに来て思ってけど」
 自分の髪を手櫛で梳いていく。その髪は元の世界に居た時と同じくらいには艶やかだ。と言っても彼女は幾度となくその生を終えておりこの姿で【大聖女】としての力とかつての記憶を同時に継承していただけだ。
「今回は…【伊賀】のところに【霧宮】ね。あとは旧家で射撃の名家の【黒岩】で舞で有名な【三枝】と槍の顧問【安藤】。あとは原初の力士【田中】で【剣王】の【浜崎】これは帰還したらしい【魔導剣姫】でしょうね。そして医療業界最高峰の【藤林】。その上で【防衛射手】の【前園】。少人数にしては多い。でも集団型に関してはネームドが多い」
 彼女の経験則から言うとコレは拙い。何せ今挙げた名前は全て今回の召喚で勇者として召喚されるネームドと呼ばれるとんでもスペックを輩出している家なのだ。集団召喚なら例え6歳でも【魔王】が完全復活するまでに育てることが出来なくもない。ただし【召喚術】の中でも特殊しぎる【勇者召喚】は完全に必要とする人材でしか召喚ができない。それにこの人数のネームドを向こうからロストさせるのは惜しい話だ。
「うん?まだってこの子は…。【片倉】?聞いた事がないから巻き込まれ?」
 全てを確認し終えた【大聖女】は頭を悩ませた。例の【片倉】にだ。
 正直に言えば魔王討伐なんぞ【浜崎】や【田中】に【霧宮】と【聖女】で十分なそれでもお釣りが出るほど。それにも関わらず【藤林】という医療業界が入り込むのは不明。今代【聖女】たちが無能であろうとも過剰戦力。ただし一部の【聖女】は既にその才を開花している。

 故にこの【片倉】は完全に不明だ。その一切の能力が不明。それにステータスも構成も親族さえも不明。もはや真面に分かる方が少ない。例えば家族構成。4人家族だが本人は養子。そして親は愛娘を本人に任せて仕事で世界中を飛び回っている。そしてその娘も特殊能力者な気配がする。そして何故か彼の実親やその血の繋がりを特定できない。完全な【特異存在イレギュラー】なのだろうか?真名が不明の異常はやれることの方が少ない。

「はあ。仕方ないかもね」
 この子はある程度の訓練を受けさせてから教会側で保護しよう。そう考えだした。

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