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月末恒例ドンタコスゥコ商会ですねぇ その1

 コンビニおもてなし本店があります辺境都市ガタコンベは、この世界最大の都市パルマの領土内にあるのですが、その中央地である王都から遠く離れた僻地にあります。
 そんな僻地に存在する都市は、ガタコンベに限らずほぼ例外なく周囲を高い城壁で囲まれています。
 と、いいますのも、こういった辺境地の森林の中には害獣指定されている凶暴な魔獣達が多く存在しているからなんですよね。

 ……とはいうものの、最近のガタコンベの周囲は割と平穏です。
 
 ガタコンベ周辺でもっとも巨大で凶暴な害獣とされているのがタテガミライオンなのですが、この害獣の群れを中心に毎日狩りまくっている人達がいるもんですから、少なくとも街の近隣ではその被害が激減しているんですよ。
 ……まぁ、その狩りまくっている人達っていうのが、コンビニおもてなしの店員でもありますイエロとセーテンなんですけどね。
 以前はこの2人に、武具工房を経営しているルアを交えた3人が魔獣狩りを行っていたのですが、ルアが絶賛子育て中のため今はその代わりにルアの旦那のオデン六世さんが加わっています。
 もともとオデン六世さんは、商店街組合に街の衛兵として雇用されていたのですが今はイエロ達と行動を共にしながら衛兵業務をこなしているといった感じになっています。

 で、そんな勢いでイエロ達が狩りまくっている害獣たちですが……街の周辺では減ったものの、その総数は極端には減っていないそうなんです。
「主殿、奴らの繁殖力は並大抵ではござらぬ。一度に何十匹も子を成し、しかも成獣化するのに1週間とかからぬでござるゆえ」
 イエロ曰く、そういうことらしいんですよね。
 まぁ、コンビニおもてなしとしては、タテガミライオンなんかは害獣でありながらも、そのお肉がすごく美味しいもんですから、毎日その肉を使った焼き肉系のお弁当にして販売しているわけですので、完全に居なくなられてもちょっと困るよなぁ、という痛し痒しな問題も抱えていたりします。
 まぁ、まだ個体数が激減したと思えるほどにはなっていない害獣共ですけど、いざとなったら何かしらの対策を考えないと……とも思っている次第です。

◇◇

 そんな中、月末恒例のドンタコスゥコ商会のドンタコスゥコが、荷馬車隊を引き連れてガタコンベにやってきました。

 このドンタコスゥコ商会は、月に一度コンビニおもてなしにやってきてあれこれ品物を購入しては、それを王都の方にあります辺境都市バトコンベって都市まで行商に行っているんですよね。
 で、ドンタコスゥコ商会の本店は、そのバトコンベとガタコンベのちょうど真ん中あたりにありますナカンコンベっていう辺境都市の中にあるんだとか。
 僕はまだ行ったことがありませんけど、東西南北から街道が集中している辺境都市らしくて、ドンタコスゥコ商会以外にも辺境で商売をしている商会が多く本店や支店を構えているんだそうです。
 で、ドンタコスゥコ商会はそんな中でも新進気鋭といいますか、目下急成長中の商店なんだとか。
 ……まぁ、ドンタコスゥコ商会の会長であるドンタコスゥコ本人談によりますので、どこまで信用したらいいのかな、とは思ってしまうわけですけどね。
「失礼なことを言われますねぇ。ドンタコスゥコ、嘘つかな~い」
 僕がそんなことを呟いていると、ドンタコスゥコが僕の肩を叩きながらそんな事を言いました。

 で、そんなドンタコスゥコ達は、いつものようにおもてなし酒場の脇に荷馬車群を並べて行きまして、酒場の二階にあります宿屋に宿泊する手続きをとっていました。
 と、いいますのも……
 ドンタコスゥコ達はガタコンベへやって来ると、その初日は派手に酒盛りをするのが常なんです。
 おもてなし酒場が出来るまでは、その前身だったビアガーデンで朝まで飲んだくれていたドンタコスゥコ商会の皆さんですけど、最近はおもてなし酒場でしこたま飲みまくって、んで、酔いつぶれたら宿に移動していって寝るというのが行動パターンになっているわけです。 
 ドンタコスゥコ商会の皆さんって全員が若い女性なんですけど……そんなんでいいのかねぇ、と思ったりもしないでもないんですけど、まぁ、本人達はバトコンベまで往復してしっかり儲けて、んで、おもてなし酒場で心ゆくまで羽を伸ばすというのがこの上ない楽しみになっているらしいので、そういうのもありなのかな、と思うようにしているわけです。
 そんな中、ドンタコスゥコが店内をキョロキョロ見回していました。
「店長殿、あの蛙のお嬢様は今日はどちらですかねぇ?」
「ヤルメキスかい? 彼女なら今は新婚旅行で王都に行ってるよ」
 僕がそう答えると、ドンタコスゥコってば、両手で頬を押さえながらムンクの叫び張りの驚愕の表情を浮かべました。
「そ、それでは、あの……式も終わったのでありますか……あの、ブーケトスも……」
 そう言うドンタコスゥコなんですけど……何? ひょっとして次の花嫁は私よ!とばかりに、ヤルメキスのブーケを狙ってたの?
「まぁ、そう言うことになりますかねぇ」
 僕の言葉に、ドンタコスゥコってば、苦笑しながら答えました。
 いつの間にかそんなドンタコスゥコの後方には、ドンタコスゥコ同様にヤルメキスのブーケを狙っていたと思われるドンタコスゥコ商会の店員さん達10人くらいが並んでいまして、ドンタコスゥコ同様に残念そうな表情を浮かべながら肩を落としていました。

 と

 このタイミングで、本店にハニワ馬のヴィヴィランテスがやってきました。
「そこの店長、テトテ集落からぁ、干しカルキーン持って来てあげたわよ。感謝なさい」
 そう言うと、ヴィヴィランテスは背に乗せていた魔法袋を口でくわえて僕に渡してきました。

 そうなんですよ。
 以前、収穫した柿モドキとでも言うべき果物、カルキーンをテトテ集落で干し柿ならぬ干しカルキーンにしてもらってたんですけど、その干しが終わってどんどん製品として納品され始めているんです。
 今はまだ試験販売をはじめたばかりの段階なんですけど、ルービアスが行っている試食は概ね好評でして、そろそろ正式に商品として売り出そうかとしているところなんですよね。

「またまた珍しい物をお作りになられたようですねぇ」
 ヴィヴィランテスと会話を交わしていた僕の横へと移動してきたドンタコスゥコは、興味津々な様子で、僕が出来を確かめるために魔法袋から取り出した干しカルキーンを見つめていました。
「あぁ、これ、最近試作を始めた商品なんだけどなかなか好評なんだよ……で、そろそろ正式に売り出そうかと……」
 僕は、そんな感じで説明をしていたのですが、そんな僕の目の前にいるドンタコスゥコと、その部下であるドンタコスゥコ商会の皆さんってば、いつの間にか僕じゃない方向へ視線を移していました。
 よく見ると、その視線の先にはヴィヴィランテスがいるわけです。
 で、さらによく見ると、一行はヴィヴィランテスが首からぶら下げている花束をジッと見つめています。

 ……あぁ、そう言えば……ヴィヴィランテスってば、ヤルメキスの結婚式の際に、そのヤルメキスがブーケトスしたその花束を強引に奪い去ってですね、誇らしげに首からぶら下げ続けているんですよね。
 本人曰く「アタシだって乙女ですからね。結婚には憧れてるのよ……素敵な殿方とのラブロマンスって、いいじゃなぁい?」ってことらしいんですけど……ヴィヴィランテス、お前、雄だよね?

 で、そんなヴィヴィランテスが首からぶら下げている花束を見つめているドンタコスゥコとその部下の皆さん。
 そんな皆の視線に気がついたヴィヴィランテス、
「……何よあんた達、これ、あげないわよ」
 そう言いながら後退っていきます。
 で、そんなヴィヴィランテスに、ドンタコスゥコ達はジリジリとにじり寄っていきます。
「くれとはいいませんですよ。むしろ売っていただけませんかねぇ……高価買い取り保証いたしますですよ」
「いやぁよ、これはアタシの結婚のお守りみたいなもんなんだから」
「そこを曲げてお願いしたいんですよねぇ」
 なんか、気がついたらですね店の隅で壮絶な売買交渉が始まっていました。
 僕は、そんな一同を、ただただ苦笑しながら見守るしか出来なかったわけです、はい。

 そんな中、お友達と遊びに行っていたパラナミオが帰ってきました。
「パパただいま!」
 パラナミオは満面の笑顔で元気にそう言うと、僕に抱きついて来ました。
 最近のパラナミオは、帰宅する度に元気に挨拶をして、そして僕に抱きついてきます。

 父として至福な一時です。

 そんなパラナミオですが、店の片隅のヴィヴィランテス達に気がついたようです。
「パパ、ヴィヴィランテスさん達はいったい何をしているのですか?」
「あぁ、あれは大人の話だから、パラナミオは気にしなくていいんだよ」
 そう言いながらパラナミオの頭を優しく撫でる僕。

 ……そうだなぁ……パラナミオもいつかはヤルメキスみたいにいい人を見つけて……

 なんて事を一瞬考えたのですが……いやいや、まだまだパラナミオは嫁にはいかせませんよ、と、思い直した親ばかな僕です、はい。

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