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第一話 あれ?


 少し整理しよう。

 ここはどこだ?

 俺の記憶が正しければ、車を停めて仮眠したのは、東名高速下り中井PAだ。でも、周りを見ると、そんな雰囲気ではない。

 見たことがない場所だ。道路ですら無いのかもしれない場所で、愛機のマルスに乗っている。

 そうか、夢である可能はあるな。
 ラノベの読み過ぎで、頭が混乱しているのかも知れない。もう一度寝よう。そうだ、それだ!寝て起きれば・・・。問題解決・・・にはなっていないだろうな。

 寒さを感じる。確か、今日は6月で夜は涼しいかも知れないが、寒いと感じる気温では無いはずだ。暑いのなら、まだ解るが・・・。寒いと感じてしまう。

 そして決定的なのは、フロントガラス越しに見える。
 子供より少し大きい身体で、緑の体表面色を持ち、腰に布を巻いただけの姿で、粗末な・・・棍棒のような物や、錆びついた剣や槍を持っている。生物が、10~20匹こちらを伺っている。ギィギィやギャギャと叫んでいる。

 どう見てもゲームやマンガで見た、”()()()()”だ。

 俺って転移しちゃったの?
 そんなわけないよな?

 死んでも居ない・・・。多分。
 誰かを助けたわけでもないからな。きっと夢・・・は、もうやめよう。

 それに、マルスが有る。この世界ってガソリン有るのかな?
 そもそも、トラクタ部分だけで、トレーラがなくちゃ使いみちがあまりないよな?接続部分を作って、引っ張るにしても、テクノロジーの違いを吸収できるとは思えない。そもそも、ガソリンの入手ができるのか?
 ラノベの定番設定だとしたら、中世くらいの技術や文化だろう?魔法があるかも知れないが・・・。どうなのだろう?

 そもそも、マルスを動かして大丈夫なのか?
 こいつなら、ゴブリンを跳ね飛ばすくらいはできそうだけどな。

 とりあえず、再度、火を入れてみるか?

 マルスの起動スイッチを押す。

 電飾が灯る。なんとなく安心できる。
 そうだナビ!マルス本体なら、何かしらの情報があるかも知れない。

”ピッピッピッピ”

 やはりダメか?エラー音が虚しく響く。

”マスター登録をお願いします”

 は?
 マスター登録?アイツらに言われて、何度か初期化したが、マスター登録なんて要求されなかったぞ?

”マスター登録をお願いします”

 えぇやり方がわからん。アイツらがいじったから、マニュアルなんて置かれていない。
 そうだ!スマホ!

 取り出すが、電波・・・がある?
 繋がる!

 しかし、セットアップしていたツールが全部無くなっている。
 ”マルス”というアプリだけが残されている。これも、あいつが作ったものだ。マルスの状態を見たり、短い距離なら呼び寄せたりできる物だ。

 電話アプリは入っているが、電話帳には、”マルス”とだけ存在する。

 克己や真一に連絡できれば何かがわかったかも知れないのに!

”マスター登録をお願いします”

「やり方がわからん!それにここはどこだ!」

”マスター登録の方法を説明します”

 お!進んだ
 ナビだった画面に説明が出るようだ。さっきまで真っ暗だった物が光った。
 言語を選択するのか?日本語以外、何の文字なのかわからない。日本語を選択する。

”日本語が選択されました。レールテ標準語とのコンバートを開始します・・・・・コンバート成功しました。これより、レールテ標準語と日本語には相互変換が適用されます”

 へ?
 意味がわからないけど、まぁいい。

 画面が次に進む。
”魔力の登録を行って下さい?”

 俺、魔力なんて持っていないぞ?

「マルス。俺、魔力なんて無いぞ?」

”レールテでは、必ず魔力を持っています。ナビに触れてください”

 俺、レールテ?生まれじゃないのだけどな。
 言われた通り、ナビの画面にふれる。12.1インチのディスプレイだ。

”魔力パータンを検知。登録・・・成功しました。登録名:ヤスシ・オオキ 年齢:21 種族:不明 ステータス:体力A 腕力B 精神力A 知力H 魔力A 魅力A スキル:マルス 生活魔法”

 知力Hってなんだよ。確かに、俺は頭が悪かった。でも、Hは無いだろう。Hは!
 年齢21ってかなり若返っているけどいいのか?さっきから気になっていたが、フロントガラスに映るのが俺だとしたら、かなりイケメンになっている。イケメンのトラック運転手で、21歳。どっかのTVに出られそうだな。髪の毛も、完全な茶髪になっている。短くしていたが・・・そうか、21歳くらいの時には、茶髪にして少しだけ長めにしていた時期だ。その時と同じくらいだろう。
 あの頃は楽しかったなぁ・・・彼女も沢山いたしな・・・。

 おっと、現実逃避は良くない。
 確実に異世界なのだろう。

 さて次は?

 画面が次に進む
”拠点の構築を行います”

「拠点?」

”マルスの整備・補充を行う場所です”

「俺、簡単な整備しかできないぞ?それこそ、エンジンオイルの交換とか・・・。タイヤ交換くらいだぞ?」

”整備は、マルスが自動的に行います”

「自動的?」

”工房にて、オートモードで整備・補充を行います”

「そうか、任せられるのだな」

”了”

「まかせた」

”オートモード設定。それに伴い、拠点にマルスが移動します”

「え?拠点がマルス?お前もマルス?」

”マルスはマルスです”

「わかりにくいな。よし、お前は、ディアナだ」

”登録しました。拠点/工房を、マルス。車体をディアナと呼称します。マスター拠点の設置をお願いします”

「設置と言っても、勝手に作っていいのか?」

”問題にならない場所をサーチ・・・成功。65,535(上限)箇所が該当”

「多いわ。そうだな・・・その中から、ここから近い場所で、なるべく広くて、そうだな・・・。海辺で街が近いのに、山の中腹に有るような場所はあるか?」

”近くと広いと中腹の定義が曖昧です”

「そりゃぁそうだな。距離は今のディアナで移動できる距離の半分程度ではどうだ?”広い”はそうだな。4キロ平米以上の広さで、中腹は、周りを山に囲まれていて、山の真ん中より上の場所で、そうだな。人がほとんど寄り付かない場所、あと、誰の土地でもなく、問題にならない場所だな」

”エネルギー残量検知・・・成功。距離換算・・・成功。条件にあった場所を検索・・・成功。1箇所該当します。場所は、ユーラットから10km山に入った場所に、40キロ平米の更地があります”

「そこは、何が有った場所だ?」

”古代神殿があり、居住スペースも存在します。総てを、マルスの支配下に置くことができます”

「なんか、ヤバそうな感じはするけど、そこだけなのだよな?問題になりそうに無いのならいいかな。マルス。拠点をそこに設置」

”拠点作成・・・成功”

 画面が終了にならない。

”情報端末の登録をお願いします”

 スマホが、振動して存在を主張する。
 ポケットから取り出す。

 マルスアプリが立ち上がって居る。

 画面には、マルスと接続しますか?
 となっている。YES 以外の選択肢がある事が不思議だが、様式美なのだろう。YES を選択する。

”情報端末登録・・・成功”

「情報端末にも名前が付けられるのか?」

”可能です”

「よし、エミリア。情報端末は、”エミリア”にする」

”情報端末の名称変更・・・成功。エミリアと呼称”

 スマホにも同じ画面が表示される。
 これで、登録作業が終わったようだ。拠点/工房(マルス)の説明や、(ディアナ)の説明や、スマホ(エミリア)の説明が、表示されている。とりあえず使ってみるが基本の考え方だ。マニュアルは困った時に開けばいい。今は後でマニュアルを確認できる事がわかれば十分だ。
 マニュアルは便利な事に同じ内容が、エミリアのアプリからでも参照できるようだ。

 ここまでくれば、認めるしか無いだろう。
 ここは異世界だ!

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