戦うモノ
焼け焦げた後の倉にある地面の切れ目から地下室へと続く道を進んだ先には、農具とは別のモノがあった。
それは、身の丈よりも長い槍や、刀、弓などが多く置いてある。
おそらく、昔の戦で使われなくなった武具達だろう。
「しかし、人数分はないな。どうする?」
「…そうだな」
目線を周囲の武具に向けて何かを思い付き、近くにあった弓を掴み取る。
「どうした? 弓なんて取って?」
「この村に弓を扱える者はどのぐらい居る?」
「確か、多くても数人程度だが…?」
「わかった。村に居る残った者達を集めて欲しい」
「出来るが、どうするんだ?」
「武器を作る」
「武器を作る?」
当然の疑問に雪花は、村人を連れて地下室から出るとすぐに地面に簡単な設計図を書き出した。
「こりゃあ、なんだ?」
書き出した設計図を見ても分からない表情の村人達に、雪花は急がせる。
「説明している時間はない。すぐに取りかかって欲しい」
「わ、わかった」
雨足が弱くなっている空を見上げ、雪花の予想している時間は、少なくなっていた。
◇◇◇◇◇
雨雲は過ぎ去り、空には星空が瞬いて見える。
そんな星空の下では、焚き火を燃やして簡易テントをいくつか作ってあった。
どうやら、この雪の積もった森の中を歩いて進むのは無理だと感じたらしく、テントの近くを何人かで見張り、残った者達は暖を取っている。
「全く…監視者の我々がこんな辺境の地で寒空の下に居なければならないんだ…」
兵士の一人が暖まりながら嘆息を吐き出す。
「仕方ないであろう? 長の命令なのだから…」
「いやいや、長の命令というより、長の息子である隊長の私欲らしいしな」
「まぁ確かに、辺境の女でも美人は多かったからな~」
暖を取りながら会話していると、交代の合図が掛かる。
面倒そうに立ち上がった瞬間、兵士の一人がその場に倒れ込んだ。
「なに遊んでるんだよ? ほら、行くぞ…!?」
起こそうと手を取った途端に男の腹部に激痛が走る。
「て、敵襲ぅ!」
振り替えって絞り出した声で警告した兵士の背中に何本も矢が突き刺さった。
「くそっ! 奇襲だぁぁ!!」
大声を上げて敵が来たことを知らせた兵士に今度は雪に絡まりながらも進んでくる多数の足音が聞こえて来る。
「進めぇぇ!!」
簡易テントの元へ続々と現れるほんの数時間前に襲った村人が奇襲を仕掛けて来たのだ。
慌てて出てこようとする兵士達へ今度は矢先に火を付けた火矢を簡易テントへ向けて放つ。
燃えたテントが木々を燃やし、退路を塞ぎ、逃げ場を失った兵士が次々と村人達に制圧されて行く。
「な、なんだぁ!?」
惨事に気付いた監視者が出てくる頃には、周りに居た兵士は全滅していた。
「どうも、監視者殿。連れ去られた人達を取り戻しに来ました」
満面の笑みで監視者を迎えたのは、痣だらけになっていた雪花だった。