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2人は駅に降りると(ハァー)とため息を
ついた。
カオルはなにも言わずにトシキの手を
握りしめた。
トシキは笑いながら言う。
(じゃあ、いこうか)
2人が駅を降りると目の前に大きなバス
ロータリーがあった。
駅の横にジュースの自販機があり、ト
シキは
(熱いな、なにか飲むか)
と言うとコカ・コーラとカオルの好き
なオレンジジュースを買った。
間を開けて飲むと生き返るような新鮮
さがあった。
カオルたちはゆっくりと歩きながらバ
スロータリーからさほど遠くない遊園
地に向かうモノレール売り場まで歩い
た。
カオルはなにか話さないとなと思った
が、なかなか話が見つからなかった。
少し淋しいそうにしていると、トシキ
が言う。
(カオル、もうずいぶん時が経つのに
さ、まだあるんだな、このモノレール)
カオルは嬉しそうな顔をしながら言
う。
(そうだね、私たちが子供の頃からあっ
たのにさ、このモノレール、まだくた
ばらすに動いてるね)
トシキは昔の子供時代の記憶をよみが
えらせていた。
そして少し淋しいそうな顔をして言
う。
(カオル、俺の子供の頃さ、あんな性格
だったろ、だからさ、俺、内心友達と
こういう場所来たかったな、俺は嫌わ
れてたからな)
と言った。
トシキがなぜ、クラスの嫌われものだ
ったかの本当の理由はカオルしかしら
なかった。
当時、トシキは荒れていた。
学校で何度も問題を起こしていた。
それは彼の両親が虐待をしてたから
だ。
トシキにとってはフラストレーション
を発散させる場所はどこにもなかっ
た。
とはいえ、結局、トシキはクラスで一
番優しく強い子であった。それを知っ
たカオルは、彼の優しさに一目惚れし
て、まあ、顔もクラスで一番良かった
のもあったのかもしれないが、あのと
きから惚れぬいていた。
かなりませたガキであったのが、カオ
ルだった。
カオルはトシキに優しく伝える。
(確かにさ、トシキは子供の頃、嫌われ
てたよ、だけどさ、私は今でも唯一本
当の理由を知ってるよ、私だってトシ
キのような環境にいたらさ、そうなっ
てると思う、でもね、私はあんたを知
ってる、あんたが誰よりも優しい人だ
って知ってるよ、それにさ、昔トシキ
は一人じゃなかったよ、私かいたんだ
からさ)
トシキはカオルの手を強く握ると言
う。
(そうだな、カオル、俺には常にお前が
いたんだな、だから俺は強くなれたの
かもな、ありがとう、カオル)
と言って優しく肩を抱きよせた。
カオルドキンとする。
トシキたちがモノレールの販売店につ
くと、店員に言った。
(大人2人、お願いします)
若い男の店員は笑顔で言う。
(大人2人ですね、1000円になります)
トシキはポケットから財布を出すと店
員に1000円支払った。
店員は笑顔で言う。
(ありがとうございます、はい、モノレ
ールの行き帰りのチケットです)
店員はチケットの端をもぎ取ると2人に
渡した。
トシキとカオルは店員に(ありがとう)と
言うと、白い階段を登っていった。