夏の嵐と百合の花

水原麻似

帰宅難民となった当店のマスターこと只野咲花《ただのさっか》は暇を持て余していた。

そしてあまりに退屈なあまり上記のようなしょうもない疑問を呟いたのだ。

迎えに来てくれる家族も彼氏もいない。

常連客とはプライベートで交流しない主義の咲花だ。

なのに、このやり場のない、そして出どころ不明の不思議な高揚感は何だろう。

ニュースは台風の接近と被害を報道しているのに、どこかときめいてしまう。

このワクワク感が不快だ。

だって人が傷ついて、大切な家族を失い、住む家も流されている。

他人の不幸が嬉しいなんて最低だ。

そんな自分に嫌悪を抱いた。

一人さみしく景色を眺めている。

「何でこんなバカな事いってるんだろう、わたし」

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