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秀吉の死5

 第1陣で狗と京之助は名護屋に戻った。ここも官吏と交渉がぶつかっている。さすがに家康は先を読んでいる。部下の武将が船を揃えて港に到着する。家康の名で撤退が進められている。秀保は陣営の中心にいながらおろおろするばかりだ。次々と食料を乗せ港を出て行く。
 京之助と狗のいる屋敷に次々と服部の伝令が来る。ここ2か月京之助と狗は行動を共にしている。
「遂に三成が秀吉殿の崩御を伝えたそうだ」
 京之助は伝令の報告の文を見せる。
「だがやはり奉行は会議ばかりして撤退も決まらないようだ」
 誰もこの戦いの先を考えていないのだ。狗は港に蝙蝠を張り付かせている。鼠が繋ぎを持って入ってくる。
「小西殿が高虎殿の先陣部隊を押し込んでいます」
「どうしようと言うのだ?」
「三成殿の指示を待つと?」
「勝手な奴だな?先に自分が戻って来て引き上げを止めるのか?秀保殿を担ぎ出せないか?」
 それで狗は家康の命を持って秀保を訪ねた。でも辛うじて小西を訪問して引き上げを指示して軍の中央に座った。第4陣、第5陣と戻ってくる。今は京之助も秀保の両端に家康の名代で座っている。
 だがここに至っても5奉行の撤退命令が出ていない。伝令が来て京之助は柳生を引き連れて戻った。もう次は舞台は大坂城だ。次の政権の取り合いだ。ようやく高虎が戻って来た。
「秀保殿と一緒に戻られますか?」
「いや、先に戻る。このままでは三成派と武闘派が戦争を始める。狗は先に戻って調整を行うのだ」
 その夜牙は蝙蝠、鼠を連れて大坂に走った。


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