秀吉の死4
もう狗には家康が天下を取るだろうと思っている。狗は家康の文を持って京之助と共に朝鮮に渡った。物資を降ろすと蝙蝠や鼠だけでなく柳生も情報を集めに走った。今は狗は家康の代理でもあった。不思議な回り合わせだ。港は負傷兵と飢餓状態になっている。まもなく京之助が現れた。案外に高虎は近くにいたのだ。3刻北に走って高虎の陣に着いた。
京之助と高虎に会う。高虎の顔は痩せこけていた。
「こちらは柳生宗矩殿の側近の方です」
京之助を紹介した。彼は天海と共にしていたから表には出てこなかった。
「見たとおりだ。水軍に蹴散らされてここまで南下した。地の利もなく戦場の状態も分からぬ三成の物資手配がさらに混迷させている。このままではここに孤立して敗北する。酷いものだ」
「ここだけの話ですが。秀吉殿は亡くなられていると」
「まさか?三成は?」
「伏せているようです。高虎殿は散らばった各陣営と連絡を付けられますか?」
「ああ」
高虎は地図を出してきて広げる。ここには散らばった陣が記されている。
「それぞれが伝令を出して連絡を取っている」
「その7か所に高虎殿の文を届けます。まだ秀吉殿の死は控えてください。漏れると混乱をします。ゆっくり港に集合するようにと、家康殿の名もいいですね?」
横で京之助も頷く。
狗は伝令に蝙蝠、鼠、柳生は5人の足の速いものを出してきた。高虎は狗と京之助を率いて先に港に戻ることにした。彼が港で船の手配をして引き揚げてきた部隊を戻すのだ。高虎は武闘派では重要な参謀なのだ。家康もその力を認めている。だが港の官吏は三成の命令がないと動かない。苦肉の策で高虎は官吏の大半を牢獄に入れた。