秀吉の死3
柳生の侍が狗を呼びに来た。城下を出て港の料理屋に入る。ここは事務方の侍が夜な夜な集まるところだ。だが昼はひっそりしていて町人なども飲んでいる。2階に通されると窓から大海原が見える。先ほどまで誰かが飲んでいたのか京之助の前におちょこが残っている。
京之助が文を出す。それからおちょこに酒を注ぐ。
「先ほどまでここにいたのは柳生の下忍の組頭だ。この文は宗矩殿だ」
「そんな大切なものを見せていいのか?」
「高虎殿の力がいるのだ」
秀吉殿も秀長殿と同じになったとある。
「狗は胡蝶を知っているだろう?」
「天海殿が使っている巫女ですね?」
「茶々が深夜に三成を密かに呼んだそうだ。三成は茶々の子秀頼を自分の子だと思い込んでいる。茶々もそうだ。胡蝶が天海の授けた術を使った。その夜から秀吉殿は病気と称して姿が消えた」
柳生は秀長が影武者であることを見抜いていたのだ。
「でもどうして死んだと分かったのです?」
「胡蝶が茶々の心の中を覗いた。もちろん服部や柳生を動員して調べたがまだ見つからないそうだ」
「それで私に何を?」
「次の物資を運ぶ船で朝鮮に渡ってもらいたい。それで高虎殿に家康の名前を出して撤退をまとめてほしいのだ。もちろんこちらは早く秀吉殿の死を表沙汰にする。でなければ多くの兵は戻れなくなる」
「家康殿は自分の味方になる武闘派を失いたくないのですね?」
「もちろん私も行きます。船はすべに手配している」
これも天海の策だろう。