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秀吉の死1

 秀保も名護屋の陣に詰めているが渡海していない。秀保の家臣と秀長の家臣は折り合いがよくなくどんどん離れていく。それと秀吉の体調が優れなくほとんど三成が代理をやっていると伝えた。これに付いて狗は文を高虎に送っている。その中でこの家では今後生き残りが難しいとも伝えた。
 これに対して高虎からも文が来た。
「・・・朝鮮征伐も限界に来ている。もう半年も続けば主要な部隊の敗戦は目前だ。これを石田三成らに伝えているが一向に回答が来ない。これで武闘派の不満は爆発状態だ。武闘派は家康殿に相談を持ち掛けている。狗はここにある文を家康殿に届けて命令に従ってくれ」
 今は狗は高虎の側近として表で仕えている。現在は今後高虎と共にする旧秀長の家臣をまとめている。秀長の遺言で大和の財産の半分は高虎に裏で譲られている。狗はその財宝を密かに大和城から持ち出して山に運び込んだ。これには山から30人を動員してまる3か月がかかった。
「入られい」
と声がかかって侍姿の狗が家康の居間に通される。部屋には家康と宗矩が座っている。狗は文を差し出す。高虎の側近として何度も訪問をしている。家康は文を読んでそれから宗矩に渡す。
「殿下と会ってきたがもう長くないな。秀頼殿を頼むと繰り返し言われたわ」
「それ程お悪いですか?」
「ほとんど殿下は秀頼殿のこと以外は目に入っておられぬ。三成殿では荷が重い。朝鮮征伐をどう終わらせるかだな?」
 三成はただ事務的にこの戦いを処理しているだけだ。
「武闘派をまとめれているか?」
 狗がそれで動いているのを柳生がすでに掴んでいる。だが狗であることは知られていない。
「はい。戦地では高虎殿がまとめられたと」
「今後高虎殿を武闘派の結び目として考えている。それでお主に名護屋に行ってもらいたい」
「そちらの部下の中に柳生の侍を10人付ける。繋ぎは服部にさせる」
 宗矩が口を開いた。
「私は何をしたら?」
「朝鮮征伐の引き揚げを段取りしてもらいたい。家康の名代だ」
 どうも秀吉の死を予想している。


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