もう一人の秀長13
和解も虚しく再び朝鮮に兵を進めることとなった。今回は高虎が軍に加わることとなった。それで狗達も高虎とともに大和に戻ることになった。だが出兵に対してなかなか宿老の意見がまとまらなかった。すでに秀長の死を疑いを持っていると噂されている。
「どうだ?」
「影武者がすでに気が触れています」
鼠が首を振る。
「それと服部の攻撃にもう耐えれません」
と蝙蝠が言葉を添える。すでに下忍が2人、くノ一が1人死んでいる。
「よし、影武者を連れて蝙蝠は山に送るのだ」
部屋に戻ると座っている高虎に声をかける。
「秀長殿を葬る時期かと?」
「そうだな。もう宿老達は纏まらない。後はそれそれがそれぞれの道を進む時か?だが狗はしばらくこの高虎に付いてきてくれ?」
「・・・?」
「服部からも柳生からも守る。だがこれからは家康の時代だ」
確かに秀吉の時代は終わった。ならばそれに代わるものは?三成は秀吉の威勢があっての三成だ。武闘派も誰かがまとめることは無理だ。
「もちろん、守れぬ時は去ってくれればいい」
「私も朝鮮に?」
「いや、秀長殿の宿老達をできるだけまとめてほしいのだ。それと寧々さまを頼む?秀長殿は私が朝鮮に渡った時に葬るようにしてくれ?」
狗は秀長から譲られた高虎の側近として最後の始末を始める。
送った蝙蝠が下忍を5人、くノ一を2人連れて戻ってくる。これは狐が付けたのだ。高虎が朝鮮に渡って2月目に秀長は病死として届けられた。狗の力で及ぶことなく秀長の作り上げたものが崩れていく。狗は高虎の側近として大和に入ってきた豊臣秀保に使えることとなった。