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もう一人の秀長11

 和解の話が飛び込んできた。それで石田三成が名古屋に出かけている。秀長はもう半月前に蝙蝠が守って大和に帰った。鼠は今度は高虎の腰元として残った。高虎が家康の屋敷に行く日になった。家康は敢えて三成の留守の時を選んだようだ。狗はさすがに家康の天井裏には入れず若侍に化けた。
 部屋に案内されると家康と宗矩が横に並んで座っている。
「前に座られては?」
「いや高虎殿は秀長殿の名代ですからな?」
 家康は貫禄が違う。
「ところで朝鮮征伐の話をされたとか?私の手のものが伝えてきているのは現在は敗戦に近い状態で今引き上げないと全滅の恐れがあるとのことです。これに対して今回小西行長が和解を取り結んだと言うのとですが、どうも怪しいと思われまする」
 宗矩が話し出す。すべて情報を握っていると言うわけだ。
「どちらにせよ、この戦いは止めるべきじゃ」
と家康が言い切る。
「秀長殿も同意見でございます」
「高虎殿も?」
「もちろんです」
「そこでだが、加藤清正達をまとめ上げてもらいたいのだ。私の名より秀長殿の名の方が信頼が高いのでな?」
 高虎を秀長の名で使うわけだ。家康は寧々と秀長を使って武闘派を束ねる気だ。だが作戦としては正しい。恐らく高虎も同意見だろう。だが高虎が家康と近くなればなるほど狗は去るべき日が来る。高虎は狗と家康との因縁を知らない。
 部屋に戻ると鼠から秀吉が今戻ってきた三成の報告を聞き和解を受け入れたと言うことだ。
「誰と話して決めた?」
「いえ、三成殿が話されて発表されたようです」
 三成が言いくるめた?

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