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もう一人の秀長10

 現在三成も秀吉も大坂城に戻って来ている。どうも流れてくる戦いの様子と現場は違うようだ。登城した高虎は形式的に影武者の秀長と会い、その後鼠が秘密裏に高虎を三成に会わせる。狗は二人の様子を見るために昨夜から屋根裏で服部と陣地取りをしていたのだ。
「秀長殿は大和に戻られます。それでしばらく私がここに詰めることになりました」
「そうか。でも秀長殿の出番はなくなったと思うが?」
 何という高慢な受け答えだ。
「朝鮮征伐はまだ続くのですか?」
「もう直に終わる」
「私にはこの戦いは終わるようには見えませんが?」
 高虎は戦地の情報を入れている。もはやすべての軍は飢えて孤立していると聞く。
「殿下の威光の前では」
 それで終わりと言うように三成は立ち上がった。三成は頭だけで考えている。
 高虎は戻ってくると、
「次は家康殿だ」
と一言言う。だがそれは難しい。それでやむを得ず秀長に文を書かせて鼠にもっていかせる。
 だが高虎を訪ねて来たものがいる。黒田官兵衛だ。横には小姓に化けた揚羽がいる。狗は屋根裏にいる。
「高虎殿が石田殿を訪ねられたと?」
「情報が早いですね?」
「秀長殿がしばらく静養に戻られるので私が呼ばれました」
「秀長殿は高虎殿を選ばれたわけですな?」
 官兵衛は勘がいい。
「家康殿は私が会わせましょう?」
 官兵衛と家康は確かに組んでいる。

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