もう一人の秀長7
狗と蝙蝠は大和の城に戻ってきた。すぐに下忍から報告を受けた。どうも蝙蝠と狗がいないときに城に服部を10人入れてきて下忍とくノ一が殺された。どうも秀長がいると明らかに疑っている行為だ。隠し部屋は見つけられていない。
「戻りました」
狗は若衆の格好で部屋に入った。横になっていた秀長が顔を上げた。
「伝えてくれたか?」
「はい」
「もう長くない。どこまで隠し通せるか?家老衆も安全ではない。だが狗の単独で隠し通せるのは難しかろう」
「はい。私はあくまでの影です」
しばらくして壁のカラクリが開いた。入ってきたのは藤堂高虎だ。彼とは何度も顔を合わせている。だが家老職の中でそれ程力はない。秀長が彼を呼んだことが意外であった。狗の存在すら大半の家老は知らない。
「高虎とは今後の当家の生き残りで話し合ってきた。彼は色々な領主に仕えてきた。それだけこれからは彼の力が頼りになる。殿下の時代も長く続かない。これからは高虎に言うのに従ってもらいたい。もちろん徳川の時代が来たら狗が判断すればいい」
秀長は家康との狗の悪縁のような係わりをよく知っている。
秀長の部屋を出て高虎に呼ばれた。
「これは大きな声では言えないが、この家老の主流は石田三成と繋がっている。だが私は武闘派と言われる加藤清正と付き合っている。その柱は寧々さまだ」
と言うことは家康と繋がると言うことだ。ここを秀長は言っていたのだ。だが三成は秀吉がいなくなったら残念ながら国を支える力などのない。あくまでも有能な家臣なのだ。
「寧々さまと家康の関係を調べてもらいたいのだ。これは秀長殿も望まれていることだ。必ずこの家臣団はぶつかる。後は秀吉殿の命の長さが決めるだろうと思う。だがそれまでに道を選ばないといけなくなる」
蝙蝠を残すと大阪城に走る。だがその時には朝鮮征伐は決まっていたのだ。