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もう一人の秀長6

 懐かしいお婆の洞窟が見える。狗はここで育ったのだ。洞窟の裏は焼け落ちたままの廃屋がある。そこから尾根道に上がって1刻走る。だが尾根道が別の方に続いている。
「どうも違うような気がするな?」
と言ってわざと逸れて熊笹の中を進む。しばらく行くと獣道が出てきてその道を進む。1刻も経つのに同じところにいるような気がする。そん時熊笹が揺れる。蝙蝠と狗が剣に手をかける。
「どう?」
 まるですくっと立ち上がった狐だ。後ろに下忍が5人いる。
「これがそろりが作った迷路か?」
「落とし穴もあるから気を付けてるのよ」
 それから複雑な獣道を抜け屋敷に出た。そのままそろりのいる部屋に通された。
「今何人いる?」
「今回ずいぶん引き上げさせたからのう。下忍が17人、くノ一が8人、年寄りが7人、子供が12人だ。遂に秀次殿が切腹されたらしいのう」
「会ってきたよ。秀長殿ももう長くない。秀長殿が亡くなれば豊臣も長くないと思う。我ら一族もどうするかだ」
「誰か適当な人はおりませんか?」
「またけものに戻るか?」
「やはり家康が?」
 狐が聞く。
「だろうな?我らは家康と戦ってきたからな?天海は必ず滅ぼしに来る」
「秀長殿の家臣には?」
「有望なのは藤堂高虎がいるが家康と対抗できる力はない。とにかくここに籠る準備をしておくことだな?」


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