秀長6
秀長は今日は狗を連れて秀次を八幡山城に訪ねている。最近は秀長は盛んに秀次を訪ねている。初めて狗を連れて行くことになった。城に入る時服部の気配を感じた。闇の世界では徳川が遥かに勝っている。
「どうだ秀次殿結論を決められましたか?」
「黒田殿も来られましたが?」
「それで?」
軍師が秀次に入れあげているのは聞いている。
「摂政を受けなされと言うが心配なのだ」
「そうだろうな」
「秀長殿はどう思われます?」
「しばらくは固辞されていた方がいいように思うが?」
「それはどうして?」
「最近秀吉殿は権力の座に敏感になっておられる。家康殿が落ち着いたのでほっととされているのだろうが、次は誰かとも思っておおられる。黒田殿はそれを感じているはずだが?」
確かに昔ほど軍師を通すことは少ない。
「その方がなぜ?」
「出方を秀次殿で見ているのかも?」
これはつぶやきのような声だ。秀長は今回くノ一を手配するように言っている。それですでに一緒に連れてきている。狗は立ち上がると天井に剣を突き刺した。秀長は笑いながら、
「入れ」
と言う。腰元のくノ一だ。
「何かが起こればこれを置いておく」
秀次は軽く頭を下げる。