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第16話 自分だけの答え


タイムリミットの1時間はあっという間に終わった

田中は前半の30分間何もできなかった自分に後悔しつつ、後半の30分にエンジンが掛かって、自分のため込まれていた物を白紙にぶつける事が出来た事ですっきりした気持ちも残っていた。

八木教授は、ぐちゃぐちゃに殴り書きされた田中の紙を見た後、田中に問う

八木教授「宿題の答えは、見つかったかな?」

田中「はい!答えは見つかりました。ただ、僕が出した宿題に対する答えは、教授の求める答えとは違うかもしれません。自分の中での気持ち、本音から出した答えです」

八木教授「かまわん。お前の中での答えを教えてくれ。その答え次第で、東大受験を進めるか、辞めるかを俺が判断する」

真顔でそうプレッシャーを掛けてきた八木教授の言葉を受けても田中は凛とした表情で自分の中での宿題の答えを話し始めた。

田中「僕が見つけた宿題に対する答え。正直、東大に入って何をしたいとか、何になりたいのかはまだ、分からないです。ただ、僕が去年、東大受験をして、正直東大受験するなんて学校の先生に言った時は、お前なんかじゃ受からない、親も周りの友達も皆、僕なんかじゃ受からない、無難に3流大学受けろって言われてました。その僕なんかじゃ受からないって言葉に対してムカついて、周囲の反対を押し切って僕は東大受験しました。結果は周りの言う通り、不合格。不合格になった時点で、他の3流大学を受けるという選択肢なんてありました。けど、僕は周りを見返したいって気持ちから浪人してでも、東大受験をすることを決意しました。それを聞いた親は泣いてました。それでも自分の決意を通すため、親元から離れて一人暮らししながら絶対東大合格してやるって浪人生活始めたのに、一人になった瞬間気が抜けたのか、勉強する気力がなくなってました。それではまずいって思って八木教授のチラシを見てダメもとで足を運びました。悔しいから見返したいから僕は東大に合格したいです。東大に入って何をしたいかは、東大に合格してから探します!これが僕が見つけた宿題に対する答えです!」

田中は八木教授に対して自分の思いの丈を熱く打ち明けた。

その思いを聞いた八木教授は、少し黙った後、返事をした

八木教授「お前の気持ちは分かった。結果は、東大を目指そう、いや、東大合格してやろうぜ」

それを聞いた田中は、喜びのあまり、涙を流しそうになる

八木教授「この宿題に対する答えについてだが、答えなんて正直、人それぞれ。一番大事な事は人に決められた事をやるとなるとどうしても、やる気が落ちやすい。だからこそ、自分の中で目標に対する心構えを自分の中で考えて自分の気持ちで答えを出してほしかった。目標を持った人間ってやつは、目標に向かって進んでいくから、成長スピードが格段に速くなる。東大受験まで1年間を切っている中、目標を持たぬまま、グダグダとしていても、無駄だと思ったからこそ、回りくどいやり方かもしれないがこの手法を取らせてもらった。今の目標を持ったお前なら安心だ。絶対に東大合格させてやる」

八木教授は、田中の肩に手を伸ばして伝えた。

八木教授の気持ちを聞いた田中は、涙を流しながら

田中「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

と大きな声で言った。


宿題に対する答え探しが終わり、急に緊張感が取れたのか、八木教授から今日はゆっくり休んで明日から授業を再開することを伝えられて、八木教授と田中は今日は解散した。

田中が八木教授の家を出てからしばらくの時間が経った後

八木教授の部屋をノックする音が聞こえた。

八木教授は舌打ちした

八木教授「ちっ。ついに大家が家賃の回収に来たか」

気だるそうに、八木教授は、部屋の入口のドアを開けると

黒いスーツに黒いサングラスをした二人の大柄の男が立っていた。

八木教授は顔をこわばらせて小さな声で呟いた

八木教授「あの糞大家。。。ついに取り立て業者頼みやがったのか・・・」


・・・・・


八木教授の宿題が終わり、緊張感が解けた田中は、駅前の帰り道を昨日とは違い、力が抜けた感じで歩いていた。

「!!!」

田中の目の前が急に真っ暗になった。

突如後ろから誰の手で掴まれて田中の視界が暗闇になった。

何が起こっているのかも分からず、田中は、黒いスーツと黒いサングラスの男に体を持ち運ばれて、車の中に投げられた。

田中が車内に入った後、車のドアがしまり、動き出した。

田中は目の周りの黒い布で縛られたまま、揺れる車内の音だけを、訳も分からず不安な気持ちで聞いていた。

つづく

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