天下への階段4
鼠は狗を近くの飯屋に連れて行った。ここで年寄りと繋ぎをするのだ。
「どうしてあの寺に?」
「京之助を追ってきた」
「私は城下を探し回ってここにたどり着きました。それはあの家老がここに出入りしていたからです」
「やはりここに来ていたのか?」
「坊主頭になっていました。それでこの寺に入ろうとしましたが厳重な結界が張られています。だから今のところ出入りを確認するだけです。だが光秀はここにいると思います」
光秀は次は何をしようとしている?狗は真田のことを文に書くと近寄ってきた年寄りに渡す。年寄りは代わりに文を渡す。これは長老に届くはずだ。どうも遂に家康とぶつかるようだとある。だが家康は今までの武将のようなわけには行かないような気がする。
知恵比べだ。
その夜鼠に表でボヤを起こし走って下忍を引き回す。鼠の足には追い付かないはずだ。狗は裏門から寺の墓場に降りる。
「はやり来たな?」
庫裡の前に京之助が立っている。後ろに柳生が2人取り巻く。これで狗は動きを防がれた。殺す気だ。京之助にはかなわない。とっさに反転して一人の柳生の剣を潜る。だがもう一人が突きを入れてくる。飛び去ると京之助の剣が振り下ろされる。肩を浅く切られた。
その時京之助の横に隙ができた。これは誘いの隙ではないか?だが後ろにも横にもさがれない。誘いに乗るしかない。飛び上がると反転して転がる。そこから思い切り飛び上がる。寺の屋根に手がかかる。その手を踏みつけたものがいる。揚羽の顔が見える。
「京之助は狗を殺せないわ。私が殺してあげる」
と剣を振り下ろす。京之助の剣の早やさとは違う。狗は屋根に飛び乗って揚羽を押しのけて走る。