バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

駆け引き13

 城の天井裏の蝙蝠から繋ぎが入った。未明に柴田勝家が戻ってきたようだ。城下を守っているのは僅か3千、城の中には1千もいないようだ。早々お市の方からの呼び出しがあった。狗はくノ一を連れて城に入る。軍師の片腕の部下が後ろを見張っている。案内されると柴田勝家とお市の方が座っている。
「前田が裏切った。もう終わりだ」
 ぽつりと勝家が言った。
「秀吉と話ができるとな?」
「はい。これから呼びますが?」
 そう言うと狗は部屋を移されくノ一を繋ぎに出す。1刻もせず軍師の片腕が2人の部下とやってきた。狗と並んで勝家の前に出る。片腕は秀吉の添え状を差し出す。
「秀吉殿の軍は?」
「北ノ庄を2万の兵が囲んでいます。後ろは前田殿が」
「妻と娘は?」
「責任をもって大事に預かりまする」
 だが横に座っているお市の方が首を横に振る。それでしばらく勝家とお市の方が席を外す。1刻半後に勝家だけが姿を現す。
「お市は残る」
 その一言で下がる。軍師の片腕は潜ませていた部下を城の中に呼び込む。狗もくノ一と蝙蝠もこの中に潜り込ませる。戦場を離れる時が味方にも敵にも襲われる可能性がある。しばらくして柴田の侍と女人が降りてくる。その中に3人の姉妹がいる。その時に茶々と始めて目が合った。その鋭い眼差しに狗はたじろいた。それが狗が初めて茶々に会った時だ。


しおり