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棒比べ その3(冴渡刑事の秘密)

 深い穴は滑り台のようになっており、2分間はその長い滑り台を滑っていたと思われた。

 下にたどり着いた時、冴渡は衝撃で気を失っていた。

 どれほどの時間が経っただろう。強烈な光を感じ、冴渡は目を覚ました。

 

「ようこそ! 『棒比べ』へ!」

 ピエロのような恰好をした男が、冴渡の横に飛んで来て手を差し伸べた。

 

「棒比べ……?」

 冴渡はこの地下に出来た不思議な空間に目を奪われ、立てずにいた。

 次の瞬間、ピエロはパチンと指を鳴らした。

 

「レッツ。ファイターですよ!」

 

 数人の女性が暗闇からゾンビのように手を伸ばして現れ、何も言わず冴渡の服を脱がし始める。

「おい、やめろ! 何をする!」

 無表情で襲ってくる女性たちに、あまり激しく抵抗することなく、冴渡は全裸になってしまった。

 次に女性たちは、冴渡の両乳首などペロペロと舐め始める。

 あまりのショックに動揺する冴渡。

「なにぃ……」

 Sであるが故、今までどの女性とのベッドインでもしたことのない恰好をさせられ、(両足を腰が浮くぐらいまで広げられ)冴渡は冷や汗すら覚えた。

 ピエロはその様子をニヤニヤして見つめていた。

「どれ……どんなイチモツをお持ちのファイターですかな?」

「見るな……」

 ピエロは必死に冴渡にしゃぶりついている女性を足で蹴り移動させると、そこには小指クラスのウィンナーが垂れ下がっていた。

「やめろ……見るな!」

 ピエロは、一瞬言葉を失っていた。気を取り戻し、ゲラゲラと笑い出すと、大声で一声!

 

「イッツア、ポークビッツッ!!!!」

 

 小さすぎた……。ファイターとしては致命的だった。

『棒比べ』は、ファイトクラブのように、地下組織が密かに行う秘密のゲームの事だった。

 男たちが夜な夜な集まり、イチモツの大きさを競い合う。その日、一番大きなイチモツを見せびらかせた男は、猛者として年末のグランドペニスに招待される。

 しかし、その日、一番小さかった者には……。

 

 冴渡は、我に返ったように本気の力を出し、女性たちをはねのけてウィンナーを隠す。

「それでも刑事なの?! 刑事《デカ》って言葉、あなたには不釣り合いだわ!」

「デカにちんちんの大きさは関係ない! お前ら全員逮捕だ!」

 冴渡は自分を見失いかけていた。全裸で逮捕など出来る訳がない。

「逮捕だ! 逮捕、逮捕、逮捕!」

 そう何度も叫ぶ冴渡に、逮捕する意志は全くなかった。

 

 あれほどのSである冴渡……。毎回、M探偵をMAXまで責め続けたあの冴渡が……。

 自分が短小、真性の包茎であることは誰にも知られてはいけない事実だった。そして、あれほどのSは、だからこそのSだったのかも知れない。

 

「今夜のビッグペニスは……あなたで決まりだ!」

 唐突に表彰式が始まった。

 ピエロの男は、全裸の男に近づき、巨大にいきり立ったペニスに手作りの花輪をかける。

 確かにデカい……。

「拍手!」

 パチパチとまばらな拍手がある。

 

「さて……今夜の、ア・リトル・ツウィンクルは……冴渡さん……あなただ」

「何を……する気だ?」

「この『棒比べ』、最大の楽しみは、一番小さい者を大きい者が殺すところなのよ」

「ちっ……殺人ゲームってことか……」

「その通りです」

「お前が首謀者なのか?」

 ピエロが何も言わずこちらを見ている。

 その瞳を見つめる冴渡が気づく。

「お前……黒人21センチだな!」

「ハハハハ!」

 

 冴渡が気付くと、ゲームに参加したと思われる男たちが全裸で、冴渡を囲んでいる。

 全員、手にはこん棒を持っている。

 観客たちが固唾を飲んで見ている。

 

 どうなる冴渡!

 冴渡の最大の危機だった!

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