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駆け引き9

 狗が清州を立った後を長老の下忍が追いかけてきた。
「長老からです。先ほど秀吉殿が自ら兵を1万5千連れて出陣しました」
 相変わらずの電撃的な動きだ。
「柴田勝家の戦いが始まった時、滝川一益が兵を上げたようです」
 やはり光秀の天下も難しかったが、秀吉も同じ轍を踏んでいる。信長の覇権争いだ。秀吉は滝川一益を先に叩くと決断したようだ。狗はここで方向を変えまず筒井に走った。滝川一益の後ろには家康の影がある。これを秀吉は恐れたのだろう。狗は長島に向かった秀吉軍を途中で追い抜いた。筒井城に付いた狗は直接順慶に面会を求めた。
「狗、今回は何か?秀吉殿から礼を貰ったぞ」
「滝川一益が兵を上げました。柴田勝家に向かう秀吉殿が滝川一益を優先しました。後ろの家康の影を感じたのです」
 順慶はしばらく黙った。その後人払いを命じた。
「秀吉殿は勝てるか?」
「厳しい戦いだと思います。だが滝川一益でも柴田勝家でも天下は難しいと。この後は徳川が出てきます」
「徳川には恨まれているからな互いに」
と順慶が笑う。
「よし3千を率いて私が長島に出る。狗は秀吉殿に伝えてくれ。これは秀吉殿と運命を共にするか生き道がないな」
 順慶はその場に家臣を呼んで出撃を伝えた。狗はすでに山を走っている。
 すでに秀吉は長島に布陣していた。狗は軍師に申し出た。だが通されたのは秀吉のところだった。
「黒田は今家康の元に行っておる。難しいがな」
「筒井順慶が3千を長島に」
「伝えてくれたのだな?助かる」
「柴田はどうされます?」
「それで頭が痛い。筒井を入れて後5千を何とかしたいのだが?」
「それだけの軍勢が必要なのですか?」
 どうも秀吉は柴田のところに大返しするようだ。軍師はその手配をしているのだ。
「蝙蝠に何を命じましたか?」
「お市の方を救えと」

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