駆け引き7
家康は伊賀峠を越えるとやはり千ほどの兵が迎えに来た。家康は光秀が信長の家臣団をまとめられないと読んでいたのだ。だから1歩譲るとしても慎重策を選んだ。
「やはり消極的に光秀と組んでいたのだな」
戻ってきた鼠を迎えて柳生に入った。すぐに狐が合図を送ってきた。見た限り下忍の気配はない。
「失敗だったようね?」
「伊賀峠に百ほど柳生が出たけど夜遅く戻ってきた」
「光秀は?」
「もう起き上がっている。傷口も塞がったようよ。昨夜は朝まで宗矩と話し込んでいた。そして未明には宗矩は10人ほどの柳生の侍を連れて出発した。恐らく家康を追いかけたのだろう。その中に男装した胡蝶がいたわ」
何か打ち合わせをしたのだ。
「光秀はくノ一に守られて湯治場に出かけた。場所は調べている。山に1刻入ったところにある。くノ一が3人」
狐は簡単に地図を描いた。
「光秀の見張りは鼠に代われ。狐は一度洞窟の奥の隠れ家に向かってくれ。すでに年寄りに秀吉からの金は運ばせている。あそこにまず母屋を立てる。もはや服部が襲ってくることもないと思われるが、至急に今回溢れた下忍と子供を集めてくれ」
伊賀も服部を覗いてどこもまとまりがない。
「柳生と服部と戦える軍団を作る」
「狗はどうするの?」
「清州に行く」
秀吉の元には長老を頭に蝙蝠を入れて下忍が5人、くノ一が3人、年寄りが2人いる。今までの順慶との付き合いのようなわけにはいかない。軍師の黒田は一癖も二癖もある。秀吉は人使いががうまいがどこまで信じれるか分からない。だが天下を狙えるのは家康と秀吉だろうと思う。