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第10話 過去の栄光と今の廃人

薄暗い4畳半

過去の栄光の古びたホワイトボードがポツリと置いてある空虚な部屋

1人思い返すのは

あんたについて行った俺がバカだった

あんたに裏切られた

僕は10分の1のろくでなしだから

という脳裏によぎる思い返すたびに頭痛がしてくる過去の言葉

昔、天才カリスマ講師ともてはやした大人達は

手のひら返したように去って行った

あの先生天才だわともてはやした

近所の奥さん達

今やあの人引きこもって何してのかしら?と奥様方の井戸端会議のネタにされてる

過去の栄光にしがみついて

過去の栄光のプライドを捨てられなくて

今も過去の栄光の白衣は脱げないまま

引きこもって1年間

過去の栄光の貯金は底を尽きてきた

アパートの大家からは、家賃払えないなら近い内に追い出すよと宣告されてる

昨日、最後の残りきった固まったプライドから

深夜に外に出た

最後の悪あがきと悪ふざけを込めて

作ったチラシを近所の家のポストに配りまくった

この悪ふざけのチラシがネットニュースに載ればいいのになとほくそ笑みながら

そうだ

死のう

この固まりきったプライドの塊を捨てるぐらいなら

今夜、川に飛び降りて死のう

そうだ、心に決めた

遺書はどうしよう


そうだ


この古びたホワイトボードに書こう

「天才死すとも偉人となる」

とでも書こうか

そう思った矢先、涙が溢れそうになってきた

震えた手で

弱り切った手でペンを掴み

ホワイトボードに書こうとした

その時

部屋をノックする音が聞こえた

大家か・・・

安心してくれ

今夜、俺は死ぬから

適当に誤魔化そう

そう今日を乗り切らせてくれ

俺は、力無き声を振り絞り

精一杯の誤魔化しを発したが

だが・・・

もう一度部屋をノックする音が聞こえた

俺の邪魔をしないでくれと

叫ぼうとした矢先

扉のから聞こえてきたのは一人の男の子の声であった

「ポストに入っていたチラシを見たんですけど」

扉の奥からまだ、見ぬ男の子の声が聞こえた

俺は、ほくそ笑んだ

ははは・・・神は・・・俺をまだ死なせてくれないのか

そうか・・・神がくれた最後のチャンス・・・

掴んでやるよ

俺は、最後のチャンスの扉を開けた

そして・・・何年ぶりにみたであろうかという日の光と目の前に立っていた少年の姿があった。

つづく

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