光秀11
斎藤利三が戻ってきて光秀は坂本城を出発した。丹波に向かう道と京に向かう道の曲がり角で光秀は、
「敵は本能寺にあり」
と叫んだ。そこから狗は全力で走り京に入った。街道の入り口に印があった。しばらくして年寄りが寄ってきた。
「本能寺には信長の兵が2百がいますが、弾正の忍者が15人ほどが見張っています。それに服部が30人ほどそれを取り巻いています」
宗矩が光秀の謀反を見守っているのだ。居酒屋に入ると狐が酌婦として隣に座る。
「やはり光秀が来るのね?」
口を微かに動かす。
「ああ、恐らく明日には本能寺に現れるだろう」
「信長は助けられない?」
「彼に忠告できるものはいない。運命なのだ。だが信長の後だ問題は」
狗は秀吉に掛けようとしている。宗矩のいる世界で狗達は生きていけないのだ。
「家老が買った商家は?」
「本能寺の近くにある。年寄りとくノ一に見張らせている。お棺はあるけど果心はいないわ」
「燃やそう」
「お棺を燃やす?」
「ああ、どうも果心はもう人を変える力がないようだ。光秀とともに老いるつもりだ。お棺を燃やせば寿命がさらに短くなるのではないか?」
「どうかしら?」
狐が笑っているが夜になると商家に潜り込んだ。ほとんどの忍者は出払っている。狐が降りて狗が続く。狐は嫌がってお棺を開けたがらない。仕方なく狗が剣に手をやって開く。白髪の果心が現れる。狗が火薬を入れると狐の叫び声が聞こえる。目が開いた。
「狗よ。許さん」
その声とともに燃え上る。