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コンビニと魔女の家 その2 

 コンビニおもてなし3号店の周囲に、
 中級以下の魔法使い達が、硬貨1枚と引き替えに、自分の家である巨木の家を移動させてきた結果、
 現在のコンビニおもてなし3号店の周囲はちょっとした集落みたいになっています。

 この巨木の家
 プラントっていう魔法を掛けられているんだけど
 このプラントって魔法をかけられた巨木は、魔法使いの指示で自ら移動することが可能なわけです。

 その根っこを4つにわけ、それを交互に動かしながら歩いてくる様は、ちょっと異様ではあるけれど
 特に労力を必要とせずに家ごと引っ越し出来るわけだし、
 引っ越し先に土地さえ確保出来ればいいんだから、すごく便利だと思うわけです、はい。

 しかし
 このプラント魔法って、確か結構難しい魔法なんじゃなかったっけ?
 中級以下の魔法使いの中にも、結構使用出来る魔法使いがいるもんなんだなぁ

 そう、僕が感心しながらコンビニおもてなし3号店の店外から、巨木の家々を見つめていると、
 引っ越ししてきた魔法使いの1人が、ある本を見せてくれました。

『ゴブリンでも出来るかもしれないプラント魔法のすべて ステル=アム著』
 ……ここでも、スアの著作物ですかい。

「タクラ様がこの書店をオープンさせてくださったおかげなのですよ。
 我々のような中級魔法使いが、この本を手に出来たのは」
 そう言い、なんか、涙まで流し始めたこの魔法使い。

 おいおい、大丈夫かい?

 僕が介抱していると、
 その魔法使い、ゆっくり教えてくれたんだけど、

 こういった魔法使いの著作物は
 全て例の上級魔法使いのお茶会倶楽部が、書店のほぼ全てを牛耳っていたせいで
 中級以下の魔法使い達は、こういった魔法を使いたくても使い方すらわからなかったそうだ。

 こうやって、魔法が広く知れ渡るのを阻害してたっていうか
 自分達、上級魔法使いのお茶会倶楽部所属の魔法使い以外が、これらの魔法を使用出来なくしていたとなると、ホントこの上級魔法使いのお茶会倶楽部ってのは、百害あって一理ないよなぁ。

 ちなみに、このスアの著作
『ゴブリンでもわかるかもしれない』シリーズは
 書店コーナーを開店して以降、一番売れ続けているシリーズだったりします。

 買っていった魔法使いの話だと

・とにかく解説がわかりやすい
・使用方法だけでなく、その効果や効能までしっかり説明してある
・注意事項や、禁止事項まで網羅されており、いたれりつくせり
・ステル=アム先生最高!

 なのだそうだ。

 スアの話だと、このゴブリンでもわかるかもしれないシリーズは
「……基礎をしっかり覚えた……魔法使いなら、……誰でも……使いこなせるように……書いてる、よ」
 とのこと。

 やっぱ、基礎は大事ってことだよね
 わかったかい? デラスコッタ?

 そんなスアは
 例の上級魔法使い襲撃即退散事件以降、
 よく、書店コーナーに顔を出すようになっている。

 そこで、中級以下の魔法使い達に魔法を教えたり
 適切な書物を選んであげたり、と
 何かと世話を焼いてあげている

……ん? まてよ

 スアって、重度の対人恐怖症だよね?
 でも、魔法使い達とは、なんか普通に接してないか?
 話し方は、いつものあれだけど?

 なんて思ってる僕に、スア

「……だって、……ここのみんな……は魔法使い……、人族じゃない、もの」
 だそうで……
 ってことはなんだ?
 スアが苦手にしてるのは、人族だけってことなの?

 そんな僕に、コクンと頷くと
「……亜人も、ダメ……人族と同じ……」
 そう言いながら、う~ん、と天を仰いでいった。
 
 ……と
 ここでスア、ハッとすると、慌ててを左右に振っていく。

 ん?
 どうかしたのかな? って思ってると

「……アナタは、苦手じゃない、よ」 
 そう言って、僕にギュッと抱きついてきた。
 真っ赤な顔して抱きついてくれてるスアを見た僕は、当然夜もしっかり頑張ったわけです、はい。


 魔法使い達の家が、こぞって引っ越して来たとはいえ
 巨木の家が、コンビニおもてなし3号店である屋敷の周囲にただ集まっただけだったわけだったのですが

 ここで、エレが頑張ってくれました。
 規則性もなく、適当に並んでいた巨木の家を、
 その持ち主らに、移動・調整してもらい、だいたい4つの家で1つの区画になるようにし
 その区画ごとに、石畳の道を作って、覆っていった。
 この石畳を敷いていく作業には、各魔法使いの使い魔達も積極的に参加してくれて
 おかげで、1週間と掛からずに、屋敷の周囲は、綺麗に舗装された街並みへと変貌したわけです。

 中には
 巨木の家の木の実の部屋を使って商売を始めた魔法使い達もいます。

 同じ魔法使い相手なので、儲けというよりも自分が作成した薬品なんかを試しに使ってみてくれない? 的なものらしく、なんか、そういう木の実の部屋の中では、魔法使い達が集まってワイワイ話し合いをしている光景が見られたりもします。

 スアも、よくその中に狩り出されているんだけどね。

 そんな中
 例の上級魔法使いのお茶会倶楽部ですが、

 またも書状が参りました。

 便せん30枚にも及ぶ長文だったんだけど、まぁ、内容を要約すると

『あんたね?
 私達上級魔法使いのお茶会倶楽部が絶縁を撤回してやってもいいっていってるのに、なんで申し出てこないわけ?
 ……しょうがないわね、確かにこの間の件ではこちらにも非がなくもなかったので、謝罪は勘弁してあげる。
 魔法使い達をその店から排除するだけで、絶縁を撤回してあげるから、感謝して、指示にしたがいなさい。
 お~ほっほっほっほ』


 ビリビリビリ
 さて、ゴミはゴミ箱へ入れて、っと

 僕は、便せん30枚分の紙くずをゴミ箱に入れて
 販売スペースの方へ弁当を並べに行きました。

◇◇

 その夜

 ガタコンベにある、コンビニおもてなし本店裏の
 スアと僕の巨木の家の中で、パラナミオを含めた家族みんなで夕食を食べていると
「パパ、みてください!」
 と、パラナミオが、部屋の真ん中に移動。
 
 僕が笑顔で見つめる前で、
 パラナミオは、真剣な表情で両手を前に
 そのまま、詠唱を始めたパラナミオなんだけど
 すると、その両手の前に大きな魔法陣が出現した。

 その魔法陣を前に
 パラナミオは、一心不乱に詠唱を続けています。
 その表情は真剣そのもの

 そんなパラナミオを見つめる
 僕とスアの表情も真剣そのもの

 あ、スア
 その手はダメだよ
 今、詠唱を手伝おうとしたでしょ?

 慌てて手を引っ込め、応援に戻るスア。

 そんなボクとスアの前で
 詠唱を続けたパラナミオ

 そして
 その魔法陣の中から、1体の骨人間(スケルトン)が出現しました。

 その骨人間(スケルトン)
 完全に人型というか、人体1体分完璧に揃っている。

 以前、骨1個した召喚出来なかったパラナミオ

 自分が召喚した骨人間を見つめながら、改心の笑顔をしています。
 汗まみれ。
 そんなパラナミオが、なんかもう愛おしくて、
「よくやった! すごいよパラナミオ!」
 僕は、立ち上がってパラナミオを抱きしめた。

 すると、スアもその後に続き、
 僕の横でパラナミオを抱きしめた。

 で
 何故か、パラナミオが召喚したばかりの骨人間(スケルトン)までもが
 なんか、僕とスアごと、パラナミオを抱きしめて……

 みんなに抱きしめられながら、パラナミオ
「出来ました。パパやママのおかげです」
 パラナミオ、そう言いながらワンワン泣いていました。

 聞けば
 スアにコツを教わりながら、コツコツ頑張っていたそうです。
 ただ、完全な形で成功したのは、今回が初だったとか。

 ホント
 パラナミオってば、よく頑張ったなぁ
 僕は、何度も何度もパラナミオの頭を撫でていった。

 この翌日
「あ、旦那様お邪魔してます」
 と、昼のかき入れ時の営業を言えて巨木の家に戻ってきた僕に、魔女魔法出版のダンダリンダが挨拶をしてきました。

 あれ?
 なんか仕入頼んでいましたっけ?

「いえいえ、今日は奥さまから新しい出版のお話があったので、参上した次第です」
 そう言いながら、スアから手渡されたばかりらしい原稿に目を通していた。

 そんなダンダリンダの横では、
 スアが、ダンダリンダの様子をジッと見ている。

 しばらくし、原稿をチェックし終えたらしいダンダリンダは、スアに向かってニッコリ笑うと。
「ステル=アム先生、これはいいですよ! 今までの先生とは股違った切り口の展開で、きっと話題になること間違いなしです」
 そう言うが早いか、その場から手に魔法で消えていき

 10秒後

「先生、献本が出来ました」
 って、再度転移魔法で現れるダンダリンダ。

 いつも思うけど
 魔女魔法出版って、ホント仕事が早いよな……

 そんな僕の前で、スアに献本を手渡すダンダリンダ。

 スア
 その本を嬉しそうに受け取っている。

 その本のタイトルには
「魔法使いの娘の成長期記録 1巻」
 ……って

 え?

 一瞬びっくりした表情を浮かべる僕に、スアはにっこり笑って
「……大丈夫、……夜のことは……書いてない、よ」

 ちなみにこの本は
 魔法書ではなく、エッセイとして発売されたんだけど
 あの伝説の魔法使いが結婚して子育てしていたっていうのが大反響を呼び、すっごい売れ行きしてるそうです、はい。

 で

 この書籍の中で、スアが現在コンビニおもてなしの店長である僕の妻であることを書いちゃったせいでか
 コンビニおもてなしの各店に、魔法使いや、その使い魔らしいお客さん達が殺到したわけです、はい。

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