光秀7
長老から繋ぎが来た。いよいよ秀吉が高松城の堤を作り始めたと言う。信長を播州に呼ぶのは少し送らそうと言うことになったらしい。毛利と和解調停中とのことだ。まとめあげたところを信長を呼ぶ気だ。狗はその下忍に文を持たせた。光秀の反乱の方法は見えないが、朝廷を巻き込んで進んでいると伝えた。
今日は蝙蝠を連れて安土城に潜る。光秀が登城したのを付けて城に入った。信長の城には忍者がいない。だが周りの小姓がその働きをしている。光秀クラスの武将は安土には今はいない。すべて戦闘中だ。信長が小姓に囲まれて座っている。狗は目を凝らした。一番端に座っている小姓は胡蝶だ。姿を消していた胡蝶がここにいた。光秀が入れたのだろう。
呼び出された光秀が部屋に入ってきた。
「殿、中国制覇は私に」
「お前も執拗な性格だな。しばらく秀吉に任せる」
光秀は中国を任されると思っていたようだ。だが信長は機嫌は悪くはないようだ。胡蝶の目が先ほどから天井を見渡している。今回は蝙蝠を京之助に張り付けている。彼は護衛から離れて単独城下に入っていた。
「今度家康殿を安土に呼ぶ。その案内役を任せる」
「ははあ」
まことに短い命令だ。光秀は頭を下げると胡蝶が後ろを出て行く。光秀は黒揚羽のように信長の毒殺を考えているのだろうか?廊下を出て胡蝶が口だけを動かしている。光秀もこの会話ができるようだ。
「隙はありません」
「だろうな?」
「小姓団は忍者の襲撃程度では破れないでしょう」
「別の方向を探る」
狗は城を抜けると約束の居酒屋に入る。土方姿の蝙蝠の横に掛ける。安土ではまだあちらこちらで不振が続いていて土方が溢れている。
「京之助は柳生宗矩と会っていました。どうも家康が安土に来る準備のようです」
「すでに信長が呼んでいたのだな?」
「侍を百人程度で来るようですが、柳生がすでに百人、服部が2百人も潜伏しているようです。明日光秀とあの料亭で昼を取るようです」