光秀6
光秀の動きは激しい。まだ果心のお棺は料亭の離れに残されたままだ。ここには鼠を張り付けた。光秀の元にいるくノ一から繋ぎが入った。狗は蝙蝠を連れて光秀の出る句会に潜る。この句会には公家や商人が多い。京之助が柳生の侍や下忍を周囲に張り付かせている。
「蝙蝠、いざとなったら屋根裏から出て山に走りこめ」
狗はまず常に逃げ道を探しておく。狗は逆にくノ一が用意した使用止めの厠に潜むことにした。
部屋には10人ほどが円座に座っている。武将としては光秀だけだ。
「信長殿はどうされておられるかな?」
摂政が口を開いた。
「近々播州に行かれるかも知れません」
「毛利はどうかな?」
「なかなか手強いようです」
「明智殿も播州に行かれえたとか?秀吉殿との連携は?」
摂政は光秀の陰謀を知っているようだ。
「無理ですね。現在家康殿と話を始めております」
「兵力はどうなのですか?」
「信長殿の武将に比べては見劣りします」
と言ったとたん光秀が小刀を投げた。目の光に果心が見えた。鋭い狙いだ。狗は飛び下がって蝙蝠に合図を送る。蝙蝠は一目散に大屋根に出て木に伝わって森に降りる。下忍が5人その後を追い駈けてくる。狗は反対側に飛び出して厠に忍び込む。廊下を柳生の侍が走り回っている。
厠から覗くと廊下の向こうに京之助がいて指揮している。いずれ彼と剣を交えることになるだろう。だが狗には勝つ自信がない。1刻してくノ一から合図のノックがあった。彼女は張り紙を外して厠に入ってくる。
「句会は終わり光秀も出ました。蝙蝠も戻ってきて潜んでいます」