ニカワを創る
岩絵具は砂状、粉状なので、
そのままでは、筆や紙からサラサラ、さらりと零《こぼ》れ落ちてしまう。
いつかの涙のように。
絵具として使うには。まず。
魚の皮や、獣の皮などを、湯でフツフツと煮て、
グツグツぐらりと煮出す。
涙を桶にイッパイ貯めておいて、煮てやろうか。
そうやって、煮皮《ニカワ》を作り。
岩絵具と混ぜ合わせたら。
ようやく、筆に乗せ。
紙に、寄り添わせる。
皮の他にも。
腱や筋、内臓、脂や卵、木のヤニなども、
吸着画材になる。
城内、膳所の台所頭に命じれば。
命じるまでもなく簡単に、
煮皮の材料も、火も炎も、水も湯も、幸せも、
いとも簡単に手に入る。