旅人のような、行商人
姫が出逢った、旅商人は、他の行商人とは、
毛色も、纏《まと》う雰囲気も違った。
「売り」「買い」に見境が無くなってしまう商売人、
というよりは、旅すること自体、幾多の出会い、
発見に興味を持つ旅人。
という印象だった。
藩から外へ出たことがない姫にとって、
今までに行商人達が持ち込んで来た品々や、
他藩他国の話は、いつでも、どれも新鮮だった。
が、その旅商人は、姫に、石の風変わりな使い方と、
絵の描き方を教えてくれた。
だから、記憶に色濃く、強く残り続けている。