砕いて、砕く
姫は、淡々と、石を砕いている。
深い緑色の宝石《いし》を。
地形の北側は、大海《うみ》。
で、ドン詰まり。
糸魚川藩には、悲しく、金《カネ》が無い。
天災で、地と天が動き。
その直後に、人災が。続いて一揆があった。
折り重なって、再び天災が降り掛かり。
今度は、海と天が動いた。
次いで、また人災...... と。火の車も逃げ出した。
民と藩は、いよいよ重ねて、追い込まれてゆく。
...が、姫には関係無いし、関心も無い。
ただ、翡翠を集め、砕き続ける。
だけである。
周囲の者達は、姫が、窮民と窮藩の御為に。
財政難を解決する為に。
翡翠を集め続け、砕いている、と勝手に思い込んでいる。
が、見当と想いは、相当違っていた。
姫にとっては。藩と民、民と藩の困難が、雰囲気が、
気になるといえば、少々、気になる、が。
切羽詰まって、難しく考えなくてもよい立場に生まれ、育ってきた。
難解決にと、やっている訳ではない。
やりたいから、やっている。
ただそれだけだ。
......が、本心はソレだけではない。