陰謀12
柴田勝家が越前から6千の兵と琵琶湖の東岸に現れた。これでは本願寺は挟まれたような状況になり兵を引いた。本願寺もこの頃は恭順派の力が強くなっていたのだ。陣が崩れると脆い。秀吉は毛利を押し返した。流れが確かに変わった。早くも京の入り口を固めていた六角が敗れた。
弾正の兵が京を退いた。大和に戻ってくるまでに5千が2千まで減っている。出城を奪還した順慶は先に送った2千に加えて自らが2千を率いて大和に踏み込み弾正の城を取り囲んだ。この中にも京之助の姿が見えない。
「狗か?」
順慶の陣幕に入る。
「今回は助かった。城に踏み込むべきか?」
「もうすぐ信長の軍が京から大和に来ます。決断は信長に任せた方が得策かと?」
「そうしよう」
順慶と別れると城に潜る。もう城には1千5百ほどしか残っていない。狗は天守閣の屋根裏に登る。黒装束の狐がいる。
「その恰好は?」
「もう女中もほとんど城を抜けたわ」
お互い口だけを動かす。珍しく白髪の果心が弾正の前に座っている。
「揚羽は光秀の元へ行け」
「どうする?」
「弾正もこれで終わりだ。次は光秀との約束を果たす」
「胡蝶には?」
「すでに作戦が失敗したら明智の元に行くように伝えてある。信長の運に勝てるのは光秀か?」
揚羽が去って再び弾正の中に入って天守閣に登る。
「爆弾をぎっしり敷き占めている。家老もお宝を持って逃げたわ」
「信長の兵がやってきた。引き上げるぞ」
天守閣の見える森の木に狐と登る。同時に大爆発が起こる。その後天守閣から大きな鳥が飛び立つのが見えた。弾正から遂に果心が飛び立ったのだ。