陰謀6
宗矩の一撃を受けて傷ついた肩を治療して繋ぎのあった大和の城下町の居酒屋に行く。やはり京之助が先に来て飲んでいる。
「床の下にいたのは狗か?」
「・・・」
黙っていても肩の具合で見抜かれる。
「光秀と家康殿はどんな話をしているのか?」
京之助は全く知らないようだ。
「京之助は筒井順慶に足を置いているのか柳生なのか?」
「・・・」
黙ったままお互いが酒を飲む。
「光秀は何を家康殿に約束を求めたのだ」
「これは京之助の胸の内にしまってほしい」
狗は京之助を信じているが筒井順慶は離れて行きつつある。柳生とは筒井は利益が相反する。とくに宗矩が何を考えているか分からない。
「光秀は弾正の戦い、光秀の動きに徳川は見て見ない振りを求めている」
「光秀は何をしようとしている?」
「信長を倒すつもりかと?」
「ありえないと思うが?」
「いや、宗矩殿は明らかに光秀と組んで考えている。もちろん家康殿も慎重に動くところだが」
彼が信長の後の天下を狙っているのは事実だ。その策士が宗矩なのだ。それと果心居士の存在を知っている。
「京之助と同じように私も立場を明確にしないといけない時が来ています」
筒井順慶はすでに光秀から離れて秀吉に付いている。狗も秀吉の命を受けて銭を貰い播州に長老たちを派遣している。
「次は剣を交えることも?」
「嫌な時代になったなあ」
今度は京之助が酒を注ぐ。
「実はな。宗矩殿とは腹違いの兄弟なのだ。柳生のものでもほとんど知られていない」
「宗矩殿は?」
「知っている。私が弟になる」
ゆっくりと京之助が居酒屋を出る。