閑話.迷宮入り
「大佐、例の件で進展がありましたこと、ご報告致します」
「……! 話せ」
「はっ、未だ身元は判明していませんが、先のトンネルでの情報を収集した結果、SNSでそれらしきものを見つけることが出来ました。プリントアウトしたものがこちらです」
女通信手は1枚の紙を差し出した。
そこには一般人の何気ない呟きが書かれていた。
だがその内容は少し変なもの。
「……なんだ? 車が地面に消えただぁ? おいおい、貴様はヤク中のくだらん戯言をわざわざ持ってきたのか?」
「確かに一見すればそのような見方をするのも仕方ありません。ですがこれの投稿時間、投稿した時の位置情報があまりにも接着していたのです。現実離れした話ですが、先の戦闘の映像を御覧になれば少しは信憑性も持てるかと」
女通信手が言ってるのはアリータの光線攻撃のことだ。
化学の進んだ時代とはいえあれを再現する術は未だこの世界になかった。
同時に、化学が進んでいるからこそあの攻撃が超常のものであるという見解も出せた。
「……だがどちらにせよ、車の謎は解けたとしても、逃げたテロリスト共を追えるだけの情報はないのだな」
大佐は落胆気味に、椅子に持たれかかった。
「いえ、これには続きがあります」
女通信手は1枚目の紙に似たもう1枚の紙を取り出した。
それには宙からバスが出てきたとも書いてあったのだ。
「――バスが出た……だと!? おい!」
感の鋭い大佐は車の乗り換えに気付いた。
女通信手もそれに気づき、指示をされる前に追加の報告を行う。
「既に手配しております。時間はかかるものの、順次設置されたカメラの映像を追っています。また、予測される進路方向には検問も設置してありますし、
「それだけでは足らん!
女通信手は敬礼をし、再び手配業務に戻った。
大佐は葉巻に火を付け一服を始める。
(今回のテロリスト共は何かが違う……我が軍の情報網にかかれば顔が割れてるのに身元がわからないなんてことは……。それにあの小娘のレーザー、もう1人の射撃技術……謎は深まるばかりだ)
――その後、この事件は未解決事件として扱われることとなった。