次の手10
10日ほど弾正の天守閣は動きがなかった。亡くなった年寄りの代わりに蝙蝠が送られてきた。狗の訓練時の仲間で剣の技では狗に続く。長老が気を使って送ってくれたようだ。蝙蝠も狗と同じ人夫として入れた。鼠が狐の繋ぎを持ってきた。日が暮れたら弾正が出かけると言う。
蝙蝠を連れて城の門を見張る。籠が出てきて30人ほどの侍が警護している。
「動くな」
立ち上がろうとする蝙蝠を制した。
「周りを忍者が付いている」
それで先頭を狗が見張り蝙蝠は後ろに付いた。この街道を行くと大坂に出る。だが大坂にはいる前の宿場で旅籠に入った。この周りにも侍が50人ほどいる。半刻ほど周囲を回って川から旅籠に潜入する。狗と蝙蝠がそれぞれ一人ずづ倒した。彼らは弾正の忍者ではない。床から部屋を覗く。部屋には弾正の横に小姓の揚羽が座っている。その前にも侍と小姓が座っている。
「ご無沙汰ですな。小早川殿?」
毛利の頭領の一人だ。顔を見るのは初めてだ。
「よく信長が許してくれたものよ」
「だから最後の戦いよ。毛利は纏まったのか?」
「ああ、ようやくな」
いよいよ毛利が信長に参戦するのだ。繋ぎを弾正がしていたんだ。だから本人が出てくる必要があった。再び信長に挑むのだ。
「本願寺はいつでもいいと言うことだ」
「問題は朝倉だな?」
「それは手を打ってある」
その後に床下のどこかから手裏剣が飛んできた。蝙蝠がその一つを受けて転がる。
「大丈夫か?」
「はい」
「煙玉を投げる。私の後を追うのだ」
忍者が数人襲ってくる方に煙玉を投げて床下から川に飛び出す。後ろを忍者が追いかけてくるのが分かる。2刻を走り続ける。蝙蝠が遅れがちになる。狗は思い切って反転して追い付いていた下忍を2人切る。それから蝙蝠を引っ張って尾根道から外れる。