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次の手7

「ご苦労」
 京之助が銭袋を乗せた。大和の城下も賑わいが戻っている。京之助は素浪人の格好で酒を飲んでいる。狗は人夫の風体で座っている。
「やはり助命をしたな。筒井も勇み足で攻め込んでいたら信長の餌食になっていた。これは宗矩殿の推察だ」
「やはり茶釜でしたか?」
「いや茶釜は表向きのことだ。どうやら弾正の南蛮の知恵かもしれぬ。それと胡蝶の情報を調べたが元関白邸に出入りしている。光秀は元々朝廷とは親しい。何を考えているのか分からぬがな。筒井も今回から大きく秀吉殿に近づくことになった」
「徳川殿ではなくて?」
「今の徳川では筒井は助からん」
 あくまでも外様だと言っている。
「それでだ。狗には信長殿に張り付いてもらいたい」
「何を?」
「これは順慶殿が秀吉殿から依頼を受けた」
 恐らく黒揚羽が毒殺のために潜ったと言うことを伝えたのだろう。京之助は似顔絵の描いた紙を見せた。3人の女の顔が並んでいる。
「柳生の調べでは最近雇われたものから3人に絞り込んだ。だが判明していない」
「娘から年増まで幅が広いですね?」
 黒揚羽は柳生の調べでは40歳位だと。だが変装を得意とする。
「密命は毒殺の阻止だ」
 密命を受けて年寄りを通じてくノ一を一人呼び狗は大和を出立した。途中柳生の下忍の繋ぎを受け岐阜に入った。くノ一は女中に狗は下っ端の小姓になった。どうもここには柳生の手のものが入っているようだ。すでにこの頃からそれぞれのところに柳生が配置されているようだ。
 さっそく3人の女に当たってみたが狗でも判断ができない。これで根気よく3人を見張ってみた。それで配膳係の20歳の娘に絞り込んだ。足の運びが滑るようで音を立てないのだ。

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