第四十七話 生徒会室
体育祭から早1週間。とても過ごしやすくなったが、そろそろ冷え込んできそうな今日この頃。
特訓も順調に進んでいる。そんなある日の放課後、俺は生徒会室から呼び出しを受けた。
キーンコーンカーンコーン
帰りのホームルームが終わり、焔は気だるげに帰りの身支度を整える。
「ハハ。まあ、そんなにダルそうにするなよ。あの会長だ。きっと悪いことじゃないと思うけどな」
励ます龍二だったが、更に焔のテンションが下がる。
「ああ、悪いことではないんだろうけど……ぜってーめんどくさいぜ」
「……ハハハ!! 確かにそうかもな。ただ今のお前ならどんなことでもしっかりと期待に応えることができると思うぜ。そんじゃ、俺は図書室行くわ。じゃあな。頑張れよ」
そう言って、慌ただしく龍二は教室を出て行った。
はあ……ま、さっさと行ってチャチャっと終わらせてくるか。
―――焔は生徒会室の前まで行き、ドアを3回ノックする。
コンコンコン
「どうぞー」
ドアの向こうから副会長の声が聞こえる。焔はその声を確認すると、ゆっくりとドアを開ける。
そこは社長室のような重々しい雰囲気を醸し出していた。焔の真正面にはいわゆる社長デスクにさも偉人のような雰囲気を出している会長とその横でできる秘書のような感じを出している副会長の姿があった。
焔はゆっくりとドアを閉め、2人としばらく対峙した。
数秒の沈黙の後、会長は糸が切れたように大きな声で笑いだした。
「アーハッハッハ!! もう止め止め」
会長は立ち上がり、ほとんど締め切っていたカーテンを開けた。
すると、さっきの重々しい雰囲気も嘘のように、そこにはみすぼらしく、こじんまりとした生徒会室が姿を現した。
「ごめんね焔君。こんなことに付き合わせちゃって」
副会長がさっきとは違う優しい表情で焔に近寄ってくる。
「会長としての威厳をあいつには示さなければならない!! とかなんとか言って張り切ってたんだけどねー。いつもとは違う雰囲気に耐えられなかったみたいだね」
そう言って、副会長はニコッと笑った。
何考えてんだよ会長は。本当に面白いことが好きな人だ。
会長。
副会長。
ひとしきり笑い終えた会長は勢いよく椅子に腰を掛け、くるっと焔の方に体を向ける。
「いやー、済まなかった。こんなにも自分が受けてしまうとは思はなくてね。あーおかしかった」
シーン……
え? 終わり? 俺、何のために呼ばれたの? この茶番見せるため? 何やり切ったみたいな顔してんの?
「あ!?」
お、やっと本題か……
「副会長……お茶くれー」
え?
「いつもの渋いやつですね」
え?
「そうそう。後、茶菓子も出してくれ。新しく買っといたやつあるだろ」
「あー、あのけっこう高かったやつですね。今すぐ用意しますね」
ちょ、ちょっと待て。
「あのー、会長?」
そう言うと、ようやく会長は焔のことを認識し、何かを思い出したような表情になった。だが、焔が安心したのも束の間だった。
「そうだったそうだった!! 副会長ー!! 焔の分も頼む!!」
いや、そうじゃなくて……
棚をまさぐっていた副会長も、
「あ!! そうでしたね。客人はもてなさなきゃいけないですもんね!!」
「そういうことだ!! ハーハッハッハッハ!!」
はあ……もういいや。
呆れる焔に対し、初めて生徒会室に客人が来たことに浮かれている会長と副会長だった。
果たして、なぜ焔は生徒会室に呼ばれたのか。