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反逆6

 思ったより強烈な毒だった。3日3晩狗は眠り続けた。鼠は船着場の廃屋を探して狗の介抱をした。目が覚めてもまだ体が動かない。その頃から鼠が姿を消した。狗の指示で洞窟裏の屋敷に戻ったのだ。もちろん鼠はここでは死んだことになっている。だが一人鼠と繋ぎをするのは洞窟に住んでいる年寄りだ。
 5日目に鼠が戻ってきた。狗は何とか歩けるようになっている。
「揚羽が戻ってきていて頭が死んだことを報告していました。それを受けて猿が頭を宣言したそうです」
「やはりな」
「だけど洞窟の仲間が反対したので仮頭の扱いになっています。それから下忍が7人揚羽が引き連れて京に向かったようです。この中に珍しく猿が入っているそうです」
「京のどこに行った?」
「揚羽は弾正の屋敷に入ったと年寄りから繋ぎがありました。猿を探しましたがどうも織田の京屋敷に潜り込んだようです」
「不味いな?」
 弾正が反逆する日に織田屋敷に火をかけるのだろう。だがここまで進んでいるので狗にの力では止めることは難しい。だが仲間の下忍を死なすわけにはいかない。狗は文を書くと京之助に届けるように鼠に依頼した。筒井順慶の名で内密に織田屋敷に知らせることと、柳生の力を借りることを頼んだ。
「伏見屋敷の鉄砲は?」
「運び出す準備が始まっています」
 揚羽は唯一このことは嘘をつかなかったようだ。
 鼠が出た後狗は鼠が持ってきていた虚無僧の姿で織田屋敷に急いだ。織田屋敷では黒装束に変え床に潜り込む。すでに猿たちが潜んでいるようだ。狗は気配を消すと暗闇の中で猿を探す。猿は下忍としては鍛えられていないから一番逃げやすいところにいるはずだ。やはり裏木戸に近い床下にいた。場所を確かめてから天井裏に入る。下忍の一人に近づき猿の声色で裏の屋敷に集まるように伝えた。


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